深淵

今日は特別なお客様が来た。
話す姿は静かめで柔らかい雰囲気、人当たりも良さそうな女性だ。
見たところ、年齢は30代前半。
漂わせる憂いのためだろうか、何か内に秘める魅力のようなモノを感じる。
一言で言って とても可愛らしい人だ。
そのお客さんとの話である。
 
 ~DAY 1~
 
仕事で疲れていて何かリフレッシュしたいと、思い付きでマッサージを受けに来たと。
 
少しの問診から始めるが体は言葉よりも雄弁。
体調などを細かく話してもらよりも、体の具合を揉み解しながら感じ取っていく方が 最終的にお客様のためになると経験から分かっている。
お客様も口頭による説明は苦手らしく、その方がいいとの事で早速 施術に移ることにする。
 
『当院では施術の際は下着になって頂きますが大丈夫ですか?』
「えっ!?下着姿になるんですか・・?」
『はい、ただアロマオイルを使用しますので お客様の下着が汚れないよう簡易下着が各サイズ用意して御座いますので そちらを着けて頂くのがよろしいかと思います。
女性の方は最初は抵抗があるのも当然だとは思いますが血行による肌の変化も分かるので、可能であればそうさせて頂いてます』
と説明すると迷ってる様子ながらも理解してもらえた。
 
『私は衝立の向こうで待機してますので、用意が出来たら施術台に俯せになって声を掛けて下さい』
 
衝立の反対側に立つと、まだ迷いがあったのか少し間が空いてから服を脱ぐ衣擦れの音が聞こえてきた。
程なく声で合図を送ってくれる女性。
こちらが用意していた黒いスポーツブラの上下セット姿になっている。
 
『それではお体の調子を診ていきますね』
と話しながら畳んだ衣類を横目でチラリと確認する。
丁寧に畳んで、衣類を入れた籠も最初の位置に綺麗に戻している。
もちろん自身の下着は見えないように服の下に入れて。
ここまで粗野な要素は一切見当たらない。
最初の印象通りだ。
 

まずは足の裏から揉んでいく。
やや平たく潰れ気味の踵と母趾。
何度も絆創膏を貼ったアキレス腱付近からして営業職なのだろう。
髪型はややショートだが最近、切り揃えたのだろう 髪があったと思われる部分まで他より日焼けしていない真っ白な肌が見えている点からも それが伺える。

踵と母趾は逆に膨らませるように横から圧力をゆっくり加える。
土踏まずのアーチから中心部の湧泉は強めに面状指圧で硬くなった筋を解す。
次は指だ。
親指から丁寧に引っ張るように揉んでいくが 指の間を触った瞬間に僅かに声が漏れた。
女性は聞こえてないと思っているだろうが、反応を逃すようなことはしない。
私は触覚だけでなく、視覚も聴覚も更には嗅覚まで研ぎ澄ましているのだから。
 
本来は指を解す目的の行為だが ここは敢えて指間を優しくなぞっていく施術を並行して行った。
最初は下着姿という恥ずかしさからか、若干だが緊張していた体から ほんの少しだけ全身がリラックスしてきているのを感じ取れる。
俯せで見えていないのをいい事に、施術をしながら足に鼻を近付けてしまう。
大抵の女性はマッサージを受けに来る前にシャワーを浴びて来るので、やはり匂いは殆どしない。
僅かながらに酸味のような匂いが残っているだけだ。
植物性のソープと思われる香りは全身から仄かに漂っている。
両手は真面目に施術を行いながらも 女性がシャワーを浴びる姿を想像せずにはいられない。
全身を包む泡と滑らかな体を流れ落ちるシャワー。
この女性は私に体を触られるため、1時間前に体を清めてきたのだ。
施術台の横には姿見の鏡が置かれていて、薄目を開ければこちらが見える角度になっている。
果たして彼女はこちらを確認したのか。
それとも安心しきって閉じたままだったのか・・・。
 
頭の中では妄想が直走るが 私の手は徐々に脹脛へと移っていく。
『少しお肌が乾燥気味のようなので、保湿力のあるオイルを使っていきますね』
「はいお願いします」という丁寧で素直な返事。
オイルを取りに行く時に ごく小さ目の音量でチェロのBGMを流す。
耳を澄ますと かろうじてメロディが聴き取れる程度の音量だ。
 
オイルをたっぷりと手に取り ゆっくり優しく脹脛に圧力を掛け押し上げていく。
反対側の足も同様に。
やはり少し筋がこわばっている感がある。
オイルを多めに使い、時間を掛けてリラックスさせていく。
 
乾燥気味の肌 急に短くした髪型、そして最近まで着けていたと思われる薬指のリングの跡。
仕事で疲れて・・・と言っていたが、リフレッシュしたい原因は離婚なのだろう。
別れた事でせいせいしたタイプではないようだが こんな可愛らしい女性に誰が仕打ちをしたのか。
例え一時であっても私がそれを払拭できるくらい幸せにしたいとの思いで施術にも熱が入る。
 
太腿へと手が移ると それまで順調に解れていた体のリラックスペースが止まる。
初対面の男性に直に太腿を触られることに抵抗があるのは自然な反応だ。
少し会話をする事で 薄く出来つつあった心の壁を取り払う。
 
『営業職のようですね、特に大事な膝から下は解しましたが臀部までしっかり解さないと またすぐに戻ってしまいますので』
「触っただけで分かるんですね。最近特にたくさん歩いたせいか膝に少し痛みがあるんです」
『分かりました、膝への負担を減らすためにも入念に施術をしていきます』
「ありがとう御座います」
  
女性の脚から力が抜けていくのを感じる。
更にオイルを手に取り、太腿全体へと馴染ませる。
内側へ手を滑り込ませても強張ったりはしなくなった。
血行が良くなるにつれ、じんわりと汗ばむ肌がオイルと合わさって美しく照明に照らされる。
施術を始める前に 普段より高めの温度に空調を上げていたのは この先に更に効果があるはずだ。

揉みながら1秒に1ミリのペースで臀部へと施術の手が上がっていく。
時間を掛け臀部へ到達した掌全体で左右から押し込むように力を加えると同時に ゆっくりと円を描く。
時折、親指の先が爪半分くらいショーツの下に潜り込んでいるのは女性は感じ取れているだろうか。
だが今のところ、それに抵抗する兆しは無い。
少し大胆になり、間接一つ分を潜り込ませる。
大丈夫だと判断し、同じ動作をしつこいくらい繰り返す。
何度目かの時、不意に "んふっ" と漏れた声が聞こえた。
やはり可愛らしい。
 
当然、上半身も解しが必要なので そのまま腰椎周辺へと施術の手を伸ばす。
『左右へ均等に力を加えるために、ちょっと上に失礼しますね』
と言い、返事を待たず太腿に跨る体勢になる。
私の股間と彼女の臀部が今にも触れてしまいそうな距離だ。
腰にはスリムな人に出来ることが多いヴィーナスのえくぼがある。
今、私の手の中にある この可愛らしい女性はそれほどスリムなタイプではないが成長期に水泳かバレーをやっていたのだろう。
基礎筋肉がしっかりしている事を褒めると 照れながらも喜んでいる。
微かに はにかんだ口元がまた可愛い。
「でもここ数年で肉が付いて服がキツくなってきてしまって・・・」
『大丈夫ですよ、このマッサージは痩身効果もありますので来た時より更に美しくなって帰って頂けます』
とフォローしながら脇腹へも手を回す。
通常は俯せの状態からはしないが、自分の手に従ったような気がした。

背骨の左右から僧帽筋まで終えたので体勢を変えてもらう。
『では次は仰向けになって頂けますか?』
仰向けになる際に施術台のギシュギシュと鳴る音が院内と脳内に響き渡り その感覚に軽く酔いしれる。
 
『照明が眩しいようでしたら暗くしましょうか?それともタオルを目に乗せましょうか?』
「えっと・・どちらでも」
都合良く任せてもらえたのでタオルを目の上にだけ乗せた。
暗くしても暗いなりに目を開ければ周りが見えるが、こうしてしまうと完全に視界が遮断され何も見えない。
私の世界が始まるのだ。
 
最初に戻るように足の指から始める。
今度は更に入念に指の間を愛でる。
片方ずつ終えてからは、両の足先を同時に愛でる。
脚に力は入っていないが 時折 手の指がピクピクと動いている。
予定よりしつこく触っていると、心なしか呼吸で上下する胸が早くなっているようだ。
このまま反応を楽しんでいたいが、あまりに長いのも不自然なので太腿へと移っていく。
前腕を水平に乗せ、ゆっくりゆっくりと押し上げる。
その度に自然と私の顔が彼女の腰周辺へと近付く。
音を立てないように目一杯 腰周辺に漂っていたであろう空気を吸い込む。
間接的とは言え、彼女の一部が私の中へ取り込まれているのだ。
 
太腿への施術は特に大量のオイルを使った。
脚の間に溜まる程に。
『股関節を確認しますね』
と、口実を作り片足を曲げ股関節をグルグルと回していく。
片側とは言え、ショーツ姿で足を一瞬でも開かせる動きだ、当然私はその周辺への視線が釘付けになる。
反対側も同じようにするが、一旦脚の間に溜まったオイルを気付かれないように手に取り彼女の脚へと塗布する。
一度彼女の脚から流れ落ちたオイルを 更に塗布する事で、彼女のエキスが濃くなるような気がするからだ。
 
『では両脚同時に動かします』
と言うと施術台に乗り、両脚を持ちゆっくりと回し始めた。
ほぼ正常位の形だ。
脚が開かれる瞬間はカエルのように蟹股になる、これは流石に恥ずかしいだろうが拒否するような様子は見られない。
言いたくても言えないのだ。
もし『やめて下さい』と言おうものなら (あなたはやらしい事をしてるでしょ)と主張しているように思われる。
これが本当に普通の施術なら、むしろ そう発想している自分が恥ずかしくなるのだから。
これは二度目の羞恥。
そう、一度目は着替える際、衝立越しとは言え 一度は裸になっているのだ。
 
両脚を10回ほど回した所で上半身に押し付けるように膝を押し上げる。
脚は閉じた状態で行ったが、その分 彼女の秘部は圧迫されプックリとその形を盛り上げる。
細身の女性だとこうはならない。
数回押し上げる度に 2人の乗った施術台はギシッ・・ギシッ・・と軋む。
彼女は全く見えてなくても徐々に私の世界が構築されていく。
 
台を降りて足を伸ばさせると やはり恥ずかしかったのだろう、静かに ふぅと息を吐いていた。
 
両脚を揃えると今度は無言で台に乗り、彼女の太腿の上に跨る。
完全に押さえ付けている形だが動けない体勢というだけで体重は掛けない。
ゆっくりと太腿の付け根から鼠径部を親指で上下に流す。
ここで彼女が口を開いた。
 
「けっこう際どい所もするんですね💧」
そう来る事は想定済みだ。
『はい、ここはリンパ腺が集中していて、リンパ節にはシコリも出来やすいんです
殆どの場合は良性の物なので問題はありませんが、念のために良く流しておく方がいいですよ』
彼女に反論は出来ない。
そのまま何度も往復し、パンティラインのギリギリを攻める。
目はタオルで隠されているが、明らかに顔が紅潮しているのが見て取れる。
何と言う素晴らしい反応であろうか。
私は抱きしめたくなる衝動を堪え、彼女とのギリギリの距離感を保っていた。
時間は長くは無かったが これによって私は大きな難関を超えたと満足すらしていた。
 
台を降りると彼女の右側に立ち、再び彼女の膝を曲げ 片足を持ち上げた。
右手を鼠径部に乗せ、太腿を撫でるように下へと滑らせた。
小指は完全にパンティラインに乗っている際どさだ。
ここで彼女は心配になったのか小さく声を出した。
 
「あの・・この動作は・・?」
『さっき流したリンパを更に下へと送っています。くすぐったかったですか?』
わざと彼女の意図と別の方へ要点をずらす。
「ぃぇ、大丈夫です」
またも反論出来なかった彼女は再び私に身を任せる。
逆側からも同じようにパンティラインに指を乗せた位置で何度もゆっくりと太腿を撫でる。
 
元の右側に戻り体勢を変えてもらう。
『では体を起こして四つん這いの姿勢になって下さい』
若干不安になってきたのだろう、体勢を変える姿が恐る恐るといった具合になっている。
それでも指示に従ってくれる彼女を褒めてあげたいが、異変を悟られないように自分を鎮める。
 
20cmほど脚を開いてもらって 前面から手を滑り込ませ臀部の側に脚の間から手が出る格好になる。
『さきほど流して移動させたリンパを薄く広げて消し去ります』
もっともらしい事を言いながら片側の太腿を抱き締めるように体を密着させる。
1・・2・・と撫でる度にカウントをしていく。
そして最後の8回目は親指を立て秘部を僅かに掠める。
一気に腰から背中にかけて力が入る気配を感じる。
反対側に回り 同じように行ったが、こっちでも8回目に親指が秘部を掠める。
また元の位置に戻り、同じルーティーンを繰り返すが 今度は7回目の直後に彼女の体がこわばったのを感じたが やはり8回目に秘部を掠める。
4度目ともなると どんなに鈍感な人でも気付かないわけがない。
それでも構わず8回目に軽くなぞった。
抵抗はおろか、声も出さない彼女。
今、口元を強く結んでいる彼女の頭の中は何を想像しているのだろう。
不安?それとも期待?
普通に考えれば前者だろうが、私は彼女を幸せにしてあげたく "私なりの方法" を取っているのだ。
欲を言えば後者であってほしい。

『仰向けになって下さい』
敢えて指示もシンプルにする。
 
『食事を取られてから何時間ほど経過しました?』
「5時間は経ったと思います」
『では出来ると思います。内蔵の血流アップと活性化のため、今から手で腹部を深く圧迫していきます。
掌が背骨を感じるほど押し込みますが 痛くはありませんので力を抜いていて下さい』
 
ヘソを隠すように腹部に手を当て、ゆっくりと体重を掛け押し込んでいく。
私の手が彼女の深部、内蔵を感じる。
表面からではあるが、今 私の手は彼女の内部へと侵入しているのだ。
3秒ほど押し込んで手を戻すと 安堵したように息を吸い込む彼女。
お腹周辺も今やオイルによってテラテラと輝いている。
 
私は無言で彼女の頭の方に回り込む。
タオルで視界を奪われていても気配で分かるはずだ。
彼女の顔越しに体を屈め、両手でお腹の方から乳房の脇へかけて流す。
緊張からから彼女が生唾を飲み込んだのを私は見逃さなかった。
繰り返す度に上半身を屈めた私と彼女の物理的距離が迫る。
温度を高めに設定した空調に加え、私と彼女の熱気で室内の空気はムワッとする程に上がっている。
汗が彼女に落ちないよう、頻繁に袖で顔の汗を拭う。
 
『一旦体を起こして胡坐をかくように座って下さい』
返事はせず、無言のまま指示に従ってくれるが恐怖心を抱いているようには見えない。
私は台に跨って乗り、彼女の背中にピッタリとつく。
二人羽織の体勢で後ろから彼女の乳房の下へと両手を回す。
私はそのまま乳房の外輪をなぞり上げた。
 
「あの・・これは皆さん されるんですか?」
『はい、バストアップ効果がありますので皆さん受けられますよ。
もし抵抗あるようでしたら やめますが如何されますか?』
 
「・・・お任せします」
 
心理的リアクタンスの逆を利用したようなモノだが、彼女は分かっているのだろうか。
たった今、主導権をこちらに渡した事を。
いや、分かっている。
それまでと違い、静かで抑揚の無いトーンでの問い掛けだ。
少し意地悪な気持ちが湧いてきた私はダメ押しの一言を耳元で投げかけた。
 
『全てお任せ頂いていいんですね?』
「はい、"全て" お任せします」
 
確信の瞬間だった。
当初、大人しめの印象すら受けた彼女は今や色気を漂わせるような匂いを放っている。
乳房の外輪をなぞった時の質問は、彼女なりの私への確認だったのだ。
 
その従順さは狂おしい程に愛おしく、そして同時に美しい。
 
座った状態では目隠しのタオルは無いため 正面の鏡で今の2人の体勢を目の当たりにする事が出来る。
しかし彼女はそれを見れないのか、下を向いたまま目も閉じている。
そのまま私はオイルのボトルを取り、手ではなく彼女の胸元へと垂らす。
乳房の間を通ったオイルはブラの中に留まり、流れゆく先を探すように全体へと広がっていく。
更に手にもオイルを取り、わざとニチャニチャと音を立てて手に広げる。
あまりにも小さいBGMは彼女の耳にはもう聞こえていないだろう。
 
後ろから回した両手を腹部に添えて数秒そのまま止まった。
そしてゆっくりと、しかし先ほどよりほんの少しだけ圧力を上げて乳房の両脇までなぞり上げる。
ブラにできた僅かな隙間から溜まっていたオイルが流れ落ちる様は芸術的な光景だ。
それらは先ほど撫でまわした鼠径部に沿って股間の前でオイル溜まりを作っていく。
それを手ですくい、再び乳房周辺へと塗りたくる。
繰り返していると彼女の呼吸が大きな物へと変わってきた。
深く息を吸い、深く吐き出す。
紅潮した顔に加え、体温も上昇しているのを私の手が感じ取る。
しかし、だからと言って彼女の下着の中に手を突っ込むようなことはしない。
私はマッサージ師であり、彼女はお客様なのだ。
そして私達は施術と言う媒体を通して2人の世界に入っている。
2人の匂いを含んだ咽せ返るような暑く湿った空気、彼女の体を怪しく光らせるオイル、私達の邪魔をする要素は一切ないこの空間が小さくも深い世界を形成しつつある。
 
オイルに塗れた手でブラ越しに乳房を下から持ち上げるようになぞり上げる。
まるで触れてくれるのを待っているかのように存在を主張し始めた 浮き上がる彼女の乳首の隆起までは手は伸ばさない。
乳輪の近くまでの外輪をヌルヌルとブラ越しに撫で上げていく。
彼女の呼吸が早くなっていくのが密着させている背中から伝わって来る。
 
私はゆっくりと体を離すと そっと彼女の体を寝かせた。
呼吸は早いままだが興奮が過ぎるのか両の手が拳を握っている。
それを優しく解くと ハッとするような様子と同時に全身から力が抜けていくのが分かった。
私は彼女の足元に移動した。3度目の足先へのマッサージだ。
空になったオイルのボトルをどけながら、用意しておいた2本目を手に取る。
既に全身がヌルヌルの状態だが、更に高い位置からオイルを下半身全体へと垂らしていく。
私の次の動作を想像しているのだろう、彼女は足先を重ねるようにモジモジしている。
 
期待に応えるように両方の足先に手を添える。
先程までとは違う、解すような動きではなく明らかに指の間を愛撫する私の手に彼女の全身が反応している。
手は施術台の革製カバーを掴むようにもがき、太腿はピッタリと閉じられている。
それでも足首から先だけは おねだりをするようにしっかりと此方に向けられているその貪欲なまでの素直さに歓喜を覚える。
指への愛撫はしつこいくらいに続けた。
そうしている内に彼女の声が漏れそうな気配を察知し、私の手は太腿へと移る。
今度は掌ではなく、指先だけを這わせるように太腿の間を行き来する。
ピッタリと閉じられていたはずの太腿は次の愛撫を待ちわびるかのように 次第にだらしなく広がっていく。
今度はオイルを腰周辺からショーツに掛けて大量に垂らす。
触れてもいないのに彼女は上半身を少しのけ反らせた。
右足の膝を曲げ、片脚を開かせると 今度は指先ではなく掌全体で鼠径部をなぞっていく。
私のもう片方の手は恥丘を抑えるように乗せている。
鼠径部から内腿まで撫でる。何度も撫でる。
なぞった際に股間周辺に出来たオイル溜まりからすくってまた撫でるを繰り返す。
だが性器には触れない。
あくまでも指がギリギリの位置を往復するのだ。
反対側に回り、同じように膝を曲げさせ脚を開かせるが 最初の脚を閉じなかったため完全にガニ股になっている。
硬く閉じていたはずの口元は いつの間にか半開きになって乾きそうな唇を舐める仕草がエロティックな絵画を思わせる。
 
恐らく既に何をしても抵抗しなくなっているのだろうが、私が好きにするのは違う。
彼女の求める物を察知し、それを私が具現化する。
主導権は私にあるが、あくまでも主役は彼女なのだ
彼女と言う演者を私が導き、隠されていた彼女の本質を曝け出させ 私はそれを堪能する。
 
脇腹に飛び出た腸骨の頂部を親指でクリクリしてみる。
それだけで彼女の口からは熱い吐息が漏れるのが視覚化されて見えるようだ。
言葉にはしていないが、彼女の脳内を占めていた不安は期待へと色を変えているのが手に取るように分かる。
視界を奪っているタオルは今も彼女の目を覆い視覚以外の感覚で 今この現状を想像の中で見ているはずだ。
 
既に十分過ぎる量のオイルにまみれている体に追加のオイルを垂らす。
その都度、彼女の白い喉から声にならない声が漏れ出る。
私の両の手はまるで軟体生物かのように彼女の腹部を撫で回し その度に波打つ腹部はヌラヌラと光り輝き 隠微な芸術作品となっている。
ショーツから離れたと思わせた手がショーツの上部を摘み、不意にグッと引っ張り上げる。
「あっ」と初めて彼女の口から喘ぎ声らしい響きを放った。
これ以上ないほどオイルを吸収し下半身に張り付いていたショーツは 彼女のスリットを透けさせるかの如く形を浮きだたせた。
ガニ股に開かれた脚を閉じようとはせず、むしろ腰を浮かすほどに小さく痙攣させる様子に私は心を踊らされた。
まるでお願いしますと言わんばかりにやや上を向いた秘部へと高い位置からオイルを垂らすと プルプルと震えるように反応が返って来る。
垂らし終えると同時にスリットに ツツツと指先を這わすと彼女は大きな口を開けて無言で更なる快感を訴えている。
薄い生地で出来ているショーツは彼女の膨張した肉芽の位置をハッキリと表してくれている。
ほんの軽く指で摘まんでみる。
「ん"ーー!」という裏返った声が彼女の鼻を通して室内に響き渡った。
反射的に腰が浮き上がり軽くブリッジの姿勢になったため、勢いで私の指は離れた。
そこで私は片方の手で下腹部を抑え、もう一度軽く肉芽を摘まんだ。
刺激が強すぎるのか上半身を何度も捻じるように耐えている。
その懸命な姿を見せられては止めるわけにはいかない。
リズムよく摘まむ離すを繰り返していると 先程まで押し殺していた声とは打って変わって
「ああっ! ああーっ!」と堰を切ったように喘ぎ始めた。
突然彼女は「ダメ!出ちゃう!」と言うと、下腹部を抑え付けていた私の手首を両手で力強く掴んだ。
瞬間的にそれの意味する所を理解した私は 力で勝る男の利点を使い、彼女の自由を奪ったまま肉芽を刺激した。
「ダメです!ダメェェェ!」と言うや否や 背中をのけ反らせ、軽く浮き上がった腰からショーツ越しに潮をボタボタと施術台に垂らした・・・
彼女は両手で顔を覆って「スミマセンごめんなさい」と謝るが、オーガズムは近い ここで中断するのはむしろ彼女にとっては消化不良になりかねない。
私は上半身を彼女に重ね合わせ首に手を回して抱きしめた。
『このままイキましょう』と耳元で告げると 一瞬の間を置いて彼女はコクリと頷いた。
ショーツ越しに中指一本で上下に刺激する。
我慢しようとしていた声は遠慮なく発せられるようになり「アアー!アーーッ!」と喘ぎ続けながら彼女も私の首に腕を回して その身を預けてくれる。
耳元で叫ぶ彼女の喘ぎ声が私の鼓膜をいやらしく 激しく振動させる。
悶え蠢く彼女の体はオイルのネチャネチャという音を作り出す。
しかもその隠微な響きの音は指による刺激と綺麗にシンクロしている。
私の首に回された腕に力が入ったと思った瞬間
「ィ・・イクッ!」と言うと彼女の下半身はガクンガクンと大きく痙攣した。
ガニ股に開かれていた脚は力一杯に閉じ、私の腕を固定する。
だが、指までは無理だ。
いきなり止めはせず、ソフトに刺激を続ける。
 
やがて彼女の腕から力が抜け、一旦は極限まで閉じた脚もだらしない程に その体と横たえている。
私は刺激していた指を一本から3本にし、性器全体を優しく撫でまわすようにゆっくりとペースを落としていって止めた。
完全に脱力していた彼女の腕に再び力が入ったかと思ったら 不意にグスグスと泣き始めた。
と、次の瞬間 わんわんと声を上げて私の胸の中で泣き出したのである。
これが恐怖や悲しみからの涙でないのは自信があるが、ほんの一時でも彼女に幸せを味わって欲しかった私としては少し戸惑いを覚えた。
私の胸の中で泣き続ける彼女の頭を 落ち着くまでゆっくりと撫で続けた。
 
やがて落ち着きを取り戻した彼女はまた謝った。
「すみません驚かせて、先生の白衣に鼻水いっぱい付けてしまいました・・・」
『大丈夫ですよ、"これ" は私にとって御褒美です』
「え・・?」
『それよりも体をクールダウンさせますので そのままリラックスしてて下さい』
 
そう言うと彼女の体勢を元の位置に戻してあげた。
オイルまみれの施術台はよく滑り、それを容易にした。
 
クールダウン、要するに今日の場合は後戯である。
疲れたであろう腿の付け根や腰を揉み解しながら、同時に優しく撫でていく。
トルソーから末端へ向けて見えない何かを排出させるように。
手先まで終える頃には彼女の呼吸も平常時レベルになり、最初に施術台に寝た時のように行儀良く真っ直ぐな姿勢でいる。
怒涛の時間が流れたが、台に寝ている彼女を見ていると あたかも最初の光景にタイムスリップをしたかのようだ。
 
『シャワーを浴びれますが、その前にオイルを軽く拭き取りますね』と言うと彼女の体を拭いたタオルで施術台も拭き取った。
「ぁ・・私が汚してしまったので私にさせて下さい」と気を使われるが
『いえいえ、私の役目です。すぐ終わりますのでスリッパも用意しますね』と優しく制止した。
エキスたっぷりのオイルと潮を拭いたタオル、これを真空パックして冷凍保存しようと思っている事は彼女には言えない。
もちろん、今日使ってもらった簡易下着も回収する。
 
『シャワールームへご案内しますね』
そう言うと彼女の背中に手を回し、体を起こしてあげた。
先立って案内するが、後ろを着いてくるはずの彼女はスリッパの音をパタパタとは立てないため 2人の歩く小さなミシミシという音だけが周りを包む。
 
ハーブティーは飲めますか?』
「はい、飲めます。」
『では煎れて来ますので、あなたはゆっくりとシャワーを使って下さい。必要な物はシャワールーム内に揃っていますので』
「ありがとう御座います」
そう言うと改めて恥ずかしさが込み上げて来たのか 照れたようにペコリと頭を下げた。
身長差が大きいため 彼女の後頭部を見下ろす形になったが、その姿があまりに可愛らしく 強く抱きしめたくなる衝動に再び駆られた。
 
シャワールームへ入る姿を確認すると私はお茶を用意しに別室へと移動した。
葉をポットに入れながら私は彼女の先程までの悶え狂う姿を思い返した。
シャワーを浴びている彼女は今何を想っているいるだろう。
私と同じであろう事は容易に想像がつくが 彼女の場合はとてつもない羞恥心を伴っている事だろう。
その状態の彼女を想像し、二重の満足感を得る。
 
やがてタイミングを見計らってお茶を持って施術室に戻った。
もしやバスタオル姿かと期待したが、そう上手くはいかない。
しっかりと来院した時の服装に戻っていた。
それでも急いだのだろう、まだ少し濡れている前髪が引っ掛けていた耳からハラリと垂れて 何とも言えない色っぽさを醸し出している。
 
カモミールを煎れてみました。2杯ありますから一緒に飲みましょう』 
「ありがとう御座います」
と まだ熱いはずのカップを両手で包み込むように持って少し口に入れた。
どちらから何を切り出していいのか困ったような空気に包まれていたが、最初に口を開いたのは彼女の方だった。
 
「先程は急に泣いてしまったりしてスミマセンでした」
『いえいえ泣かせてしまったのは私です、謝るのは私の方です』
「違うんです! あの・・」そう言うと、彼女は自身のエピソードを語り始めた。
 
最近まで結婚していた事。
自分の持つ被虐的と思われる性癖は隠したまま入籍したが、思い切って夫に打ち明けたところ
受け入れてもらえるどころか、それを義母に話し2人して揶揄うようにいじめてくるようになった事。
将来を考えると恐ろしくなって逃げるように飛び出してきた事。
相手の条件を丸飲みして離婚が成立し、これから仕事を探す前に あまり深く考えずにリフレッシュのつもりで来院した事。
施術中に怪しい動きに最初は抵抗しようと思ったが、もう私なんかどうにでもなれと ヤケになって身を任せた事。
そんな中でも夫には拒絶された自分を ここでは暖かく受け入れてくれてるような気がした事。
それらが快感と同時に混ざったようにフラッシュバックし、感情爆発してしまったのだ と。
 
本来は人に話したくないような内容を吐露する彼女は 終始うつむき加減で一点を見つめていた。
熱いであろう手は時々モゾモゾと動かしてはいたが無意識にしていると思われるほどだった。
 
「こんな事、初対面の先生に話す内容では無いと思いますが、私のせいで先生が誤解されてはいけないと思いまして・・・」
 
話し終えて寂し気にお茶を飲む彼女を前に 淫靡な想像ばかりしていた自分を恥じた。
離婚が関係している事は想定していたが、彼女の中にはあまりにも深い傷があったのだ。
無理解、拒絶、嘲り、彼女の中に刻まれた傷を私は埋めてあげる事が出来るのであろうか。
いや、私がやらずに誰にするのか。
誰にもその役をさせたくないという感情が私の中から沸き上がって来る。
この時、メシア願望のように私は彼女を救いたいとの使命に似た決意をしていた。
 
『ここは人を治す場所として私が開きました。あなたさえ良ければ私に癒させて下さい。』
放心状態のようにカップの中をボーッと眺めていた彼女は驚いたように 

"えっ?"と顔を上げ しばらく私の目を見つめた。
『どうか是非私に』と更に押すと彼女は大きな目を細めて
「宜しくお願いします」と深々と頭を下げた。