小さなインパクト part5

 僕が女性とラブホテルの部屋にいる。
未知の世界に立った感覚に全身が緊張している。
ゆっくりと辺りを見回すと真っ白な部屋の中央にある大きなベッドが自然と目に入る。
ここで男女が・・・
後ろから笑い声が聞こえた。
『やっぱり気になっちゃうよね』
まるで勝ち誇ったかのような意地悪な笑い方をしてるハルカさんに指摘されて恥ずかしくなった。
「ぃゃ、あの・・なんかつい」
『初めてなら当然の反応よ♪』
「もっと狭いイメージを持ってたんですが、けっこう広いんですね」
何とか自分を誤魔化すように部屋全体への話に切り替えようとした。
『部屋によるね。高い部屋ほど広いしゴージャスになるよ』
「ゴージャス・・・」
妙な所に引っ掛かった独り言でまたハルカさんにケタケタと笑われた。
ホテルに来てから恥ずかしい事ばかりだ。
でも、撮影はもっと恥ずかしいんだろうなと考えると足が震えそうになる。
 
『そのバッグ開けて照明機材を出してくれる?』
「ぁ、はい」
傘の形をした照明らしき物が2つと 骨組み?の金属スティックがいくつも入っていた。
『私はこっち組み立てるからヒロト君も適当に組み立ててみて』
(適当にってハルカさんらしいなぁ)
言われるがままに始めてみたけど複雑な構造じゃないので、スタンド部分は簡単に組み立てることが出来た。
 
『じゃあ この壁をバックにするからこことこっちに設置して・・・と』
傘状の中にライトをセットすると、一番大きな壁に向かうように2組の照明を向け ちゃんと作動するかチェックしていた。
『OK!これで撮影は始めれる。あとはヒロト君が着替えればスタートよ♪』
一気に緊張が増した。
今からここでパンツ姿になって写真に撮られるんだ。
 
『どうする?先にシャワー浴びておく?』
「え!?シャワーですか?」
『別に汗かいたりしてないんなら そのままでもいいけど』
「えーと・・浴びてからの方がいいですか?」
どうしていいか分からず、ついハルカさんに聞いてしまった。
『ん~ せっかくだし浴びておく?
 そうだ!私カメラの準備がまだだった。ヒロト君がシャワー行ってる間にやっとくね』
そう言うと持参していたバッグをゴソゴソし始めた。
 
1週間もあったけど、まだ心の準備が出来ていない事をここにきて自覚した。
撮影を少しでも先延ばし出来るような気がして僕はお風呂場に向かった。
洗面台付近には大量のタオルと よく分からないアメニティが沢山置かれている。
そもそも仕切りが無いからハルカさんが移動したらこの場所も丸見えになる。
そんな状況で服を脱ぐだけでも緊張してしまう。
早く中に入ってしまえと思って、素早く裸になって服を籠に入れると風呂の扉を開けて広い空間へ飛び込むように入った。
特に汗をかいていないけど、これから緊張して汗をかくかもしれないからボディソープも使って綺麗にしておく方が良さそうだ。
別に触られたりするわけじゃないけど、ソープを大量に体に塗りたくって体を洗う。
触られたり?・・・ぃゃ、初対面の時に触られている・・・
シャワーを勧めたのもハルカさんだし場所はホテル・・
いやまさかそんな急に。
突然自分の妄想が直走る。
何を考えてるんだ僕は。
妄想を振り払おうと夢中で体を洗っていたがボディソープのヌルヌルのせいもあって 徐々に自分の物が硬くなりつつある事に気付いた。
いけない、このままじゃ出れない。
早く収まれ収まれ!
しかし意識すればする程 意に反してどんどん硬くなっていく。
深呼吸してみても勝手に妄想が頭を駆け巡って邪魔をする。
どうしよう・・何とかしなきゃ。
ふと思い付いてシャワーを一気に冷水にしてみた。
股間に掛けると刺激になってしまうから首から下全体をキンキンに冷やした。
6月に入ったというのに水はまだかなり冷たい。
体が硬直する程に冷水を掛け続けたらどうにか収まってくれた。
危ないところだった、あのままだったらハルカさんに一体どう思われたか。
 
何となく流れでシャワー浴びたはいいけど、このまま下着を履けばいいのかな。
とりあえず体を拭いたタオルを腰に巻いた姿でハルカさんに聞いてみた。
正直この姿でも恥ずかしいけど、これくらい動じてませんみたいなアピールで "何でもない風" を装ってハルカさんの前に登場してみた。
 
「もう履いちゃっていいですか?」
視線をよそに向けて何気ない感じで聞いてみた。
『ちょっと画面確認するからこっちに立ってみて』と手を引かれた。
『冷たっ!なんでこんなに冷たいの?』
「あの・・なんかシャキッとするかなと思いまして冷水を浴びてました」
『わーぉ 気合い入ってるね~♪』
咄嗟だったけど どうにか誤魔化せたみたいだ。
まさか硬くなってしまったのを宥めていたなんて言えない。
 
壁の前に立つとハルカさんが照明のスイッチを入れた。
想像していたより10倍くらい眩しい。
そして目の前にはハルカさんしか居ないのに、まるで大勢から注目されてるような錯覚に包まれた。
モデルとして撮られるというのは こういう事なんだ。
 
『うん!大丈夫。じゃあ最初はどれにしようかな~』
早くも下着を選んでるが、明らかにベッドの上にバッグをひっくり返してブチ撒けた感がいかにもハルカさんらしい。
「あれ?5枚って言ってませんでしたか?」
『ぇ?あー、これね。決めきれずに10枚持って来ちゃった、エヘヘ♪』
悪びれずにサラッと言ってる。
しかし、その中の1枚に目が止まった。
「ハルカさん、これって・・・」
『それも撮りたくて持って来たの。Tバックよ♪』
僕はその下着を手に持ったまま無言で固まってしまった。
その僕の様子を見たハルカさんが
『ダメだった? 嫌? 無理?』
「・・・・・ちょっと想定外で・・・」
ハルカさんを見ると眼差しが残念そうにも見えるし、懇願してるようにも見える。
露出面積が少し増えるだけだと思えば・・・
自分を言い聞かせるように意識して
「分かりました、いいですよ」と返事をした。
『やったぁ!流石ヒロト君♪』
無理に格好をつけてOKしてしまったけど、やっぱり困惑は隠せない。
 
『まずはこれからゆっくり始めてこうか』
渡されたのは初めて履かされた時と同じ黒だったけど、いわゆるボクサーパンツだ。
ハルカさんなりに気を使ってくれたようで少しだけ安心した。
袋から出されたパンツを持って、一旦 洗面所の方へ移動して腰にタオルを巻いたまま下に履いてみた。
タオルを取って鏡を見るとピッチリしたボクサーパンツを履いた僕がそこにいる。
今からポーズを取ってハルカさんに撮られるんだ。
僕は一度 胸の奥深くまで息を吸い込み ハァァァァと吐いた。
意を決してパンツ姿のまま戻って壁の前に立った。
「準備OKです」
『はーぃ、じゃあ撮っていくね♪』
ピピッという小さな音の後にパシャッとシャッターが切られる音がした。
 
最初のシャッター音と同時に 自分の耳で聞こえるんじゃないかと思う程に心臓が高鳴ったのが分かった。
上半身全体が鼓動を打ったかのようだった。
下着姿を女性に撮られるという、僕の日常から大きく乖離した行為・状況に単なる緊張とは違った衝撃を感じた。
そんな僕の動揺をよそにハルカさんは次から次へとシャッターを切っていく。
高さを変え角度を変え、時にグッと近付いてきたりと。

『じゃあ次は後ろを向いて』
「はい」
販売サイトを見ていたので、違和感なく後ろを向いた。
『息を深く吸って もう少し腰を反らして。足は踏ん張るイメージで手は拳を握って。』
思っていたより真面目な撮影だと感じるけど、やっぱり恥ずかしい気持ちは変わらない。
20枚ほど撮ったところで次の下着を渡された。
「凄い色ですね・・・」
渡されたのはボクサータイプと形は似てるけど、それはピンクの蛍光色だった。
『同じような商品を揃えても他の会社に勝てないからね~』
 
もし1枚目にコレを渡されていたら どれだけ抵抗があっただろうか。
「ちょっと待ってて下さい」
冷静を装ってピンクの下着を握って脱衣所へ移動する。
覗きに来る事はないと思うので、そのままサッサと履き替えてみた。
鏡に映るピンクのパンツを履いた自分。
個人的にはかなり滑稽に見えるが 世の中にはこういうのを好む人もいるんだろう。
 
これでハルカさんの前に出るのは かなり勇気が必要だったけど内心は躊躇いながらもスタスタと前に登場した。
『わぁ♪ やっぱりこういうのは若い子が似合うね♪』
「そうなんですか?自分ではしっくり来ないですが」
否定的な感想とは分かっていたが敢えて正直に言ってみた。
『うーうん、本当に似合ってるよ。素敵♪』
こればかりは返事のしようが無かった。
ハルカさんの言葉を信じるしかない。
それでも 素敵と言ってもらえたおかげか、少し楽になった気がした。
もしかしたら そう言って欲しかったのかもしれない。
 
1枚目と同じ要領で撮影を再開した。
アドバイスも貰ったので、加速するようにサクサクと進んでいく。
ピンクの下着は30枚ほど撮ったところで次の下着へと移った。
 
3枚目はピンクの色違いで、これまた蛍光色の鮮やかなグリーンだったからホッとしたくらいだった。
考えてみると妙な感じだ、ついさっきまで女性の前で下着姿になる事にも抵抗があったのに今はグリーンというだけで安堵する自分がいる。
 
ここまで来ると思い上がりかもしれないが、何となく一端のモデルになったような気でポーズを取っている。
『1枚目よりも "らしさ" が出て来たねぇ。対応力あるのも若さ故かしら♪』
ズバリと指摘されて恥ずかしさを思い出してしまった。
「ん~何が違うのか自分ではイマイチですが・・・取ってるポーズも同じですし」
照れ隠しもあって少し誤魔化してみたが、隠せてなかったような気もする。
 
撮影は順調に進み、いよいよ最後のTバックになった。
ここまでの短い経験から、眺めて考えるよりも思い切って履いてみた。
後ろも恥ずかしいが前もかなり小さい。
最低限の布面積しかないデザインでサテンなのかな?とても艶々した生地で出来てる。
特にお尻に食い込むというのが こんなにも妙な感じだったとは。
想像していたよりも恥ずかく抵抗がある。
しかしOKの返事をした以上、やっぱり無理なんて言い出せないし こうしてる間もハルカさんは待っている。
ハルカさん自身はこういう商品を売っているんだから きっと見慣れてるはず。
だから残るのは僕の度胸だけだ。
鏡に映る自分の顔を睨むように気合いを入れて洗面所から出た。

小さなインパクト part4

 テストモデルをOKした翌日にはハルカさんの方からメッセージが来た。
『おはよう!今日も勉強頑張るんだぞ』
当たり障りのない挨拶だったので僕の方も
「おはようございます、ハルカさんもお仕事頑張って下さい」とだけ返した。
僕はあまりにも こういうやり取りに慣れて無さ過ぎだ。
男友達ですら少ない僕は高校でも片手で数えるくらいしか女子と言葉を交わさなかったくらいなんだから。
気になる子はいた。
しかし遠目から眺めるだけで とうとう卒業まで一度も会話も出来ず終いだった。
そんな僕が女性とLINEで日常的にやり取りをしている。
それだけでもドキドキしてしまう自分が少し情けなく感じた。
大学の同級生達は彼女も普通にいて、世間で言う青春を謳歌してるというのに。
それでもハルカさんとのLINEが僕には十分に刺激的なのも事実だ。
 
その日の夕方、今日2度目のメッセージが来た。
『学校、お疲れ様~ ヒロト君の都合はいつくらいがいいのかな?』
早くも本題に切り込んできた。
もう後には引けないので正直に答えた。
「まだアルバイトとかしてないので、学校が終わればいつでも大丈夫です。曜日によっては3時に帰宅しますし」
『そっか~ じゃあ来週の火曜は何時から空いてる?』
「火曜なら2時半に終わるので3時には駅に戻って来てます」
『良かった♪ とりあえず その日に少し撮影してみましょうか』
「わかりました」
 
いきなり明日とかにならずホッとしたけど、ほぼ一週間ソワソワして待つのもキツいかもしれないな・・・
 
もう頭の中は下着モデルの事でいっぱいになってしまってネット販売のサイトを参考までにチェックしたり、付け焼刃だとは分かっているけど 腕立てとかも始めた。
一週間で体が変わるもんじゃないけど、やっている方が自信の無さを少しでも緩和できそうな気がするからだ。
 
そうだ!ハルカさんにアドバイスを貰っておく方がいいかもしれない。
それに・・・LINEをする口実にもなる。
しかし返ってきたのは『準備? 何もいらないよ~ 下着を着けてもらって私が撮影するだけ♪』
まるでこっちの気持ちなんか考えてもないような あっけらかんとした返事だった。
以前にハルカさんから送られてきたテスト撮影のサンプルはまともに見えた。
口ぶりだとハルカさんはプロとかじゃないみたいだから 結局はモデル次第なのか・・
何だかアドバイスを求めた事が かえって自分を追い詰める形になってしまった。 
鏡の前でポーズを取ってみたりしたけど、自分では間抜けにしか見えない。
ハッキリ言えば華が無いという姿だ。
一体、ハルカさんは僕のどこを見て素敵なんて言ったんだろうか。
やっぱりお世辞だよなぁ・・・
 
とにかく、出来る事はサイトのポーズを真似る事と自宅筋トレくらいだ。
部屋なら誰にも見られないし 毎晩やっていこう。
 
朝と夕方にハルカさんとLINEでやり取りするのが日課のようになって、それは何となく励みになっている。
僕の方はこれと言って話すネタが無いのが問題ではあるが、ハルカさんはそんなこと全く気にする様子もない。
当然、下着の話も出る。
『当日は5種類だけ用意していくからね♪』
と、前のめりなメッセージにも僕は 「わかりました」くらしか返せない。
女性とのコミュニケーション下手がモロに出ているやり取りが普通になってきている。
そんな所も気にしてないハルカさんには助けられているかもしれない。
 
そうこうしている内に、火曜当日になった。
『おはよう。やっと今日テスト撮影だね♪』
僕からすれば呑気とも言えるLINEが来たけど、こっちは落ち着かない。
「何かもう緊張してます」
と、素直に言ってはみたものの
『大丈夫よ~ 軽く撮影するだけなんだから』と予想通りの返事だった。
 
学校も休むわけにはいかないので出席はしたが、案の定 撮影のことばかり考えてしまって何も頭に入って来なかった。
ランチは学食ではなく、持参して行ったダイエット用代替食の栄養バーをポリポリかじりながら牛乳で流し込んだ。
別に痩せようというわけじゃないがガツガツ食べる気分にならなかったからだ。
何も悪い事じゃないのに なぜか後ろめたさのような感覚があるのはどうしてだろう。
まるで大人の世界に一歩踏み込むような気持になる。
午後の1コマに出席する前に中庭の木にもたれかかってボーッと想像する。
今日までに数えきれないほど繰り返しイメージした光景だ。
 
ふと疑問に思った・・・
撮影って1対1?
照明さんとか他にもスタッフがいるかも?
もしそうなら 今日まで想像してきた事より数段恥ずかしい。
今になって気付く自分に嫌気すら差した。
勢いでテスト撮影を受けると言ってしまったから細かい点まで頭が回らなかった。
今日になって聞いてもどうしようもない。
仮に他に何人かいたとしても当日キャンセルなんて出来るわけがない。
どうして今までそこに気付かなかったんだろう。
でもハルカさんは繰り返すように 軽い撮影と言っていた。
それなら本当にハルカさん一人がシャッターを切るだけなのかもしれない。
あぁ 無駄だと分かっていても頭の中は まだやってもいない撮影風景で一色になってしまう。
なるべく考えないようにしよう、なるべくだ。
僕は急に重くなった腰を上げて午後の授業に向かった。
 
コマ割りだと1時半から3時まであるが、この先生はいつも30分早く終わる。
今日もいつも通り2時半に終わって、皆 静かに教室を出た。
 
ひとまず連絡を入れる。
「予定通り授業は終わりました。今から駅に向かいます」
この一文を送信するのに どれだけ勇気が必要だったことか。
ハルカさんからは即座に返事が来た。
『授業お疲れ様~。私はもうすぐ準備終わるから3時に駅で待ってるね♪』
この温度差には未だに慣れない。
 
駅に到着する頃には耳の中で自分の鼓動が聞こえる程になっていた。
改札を出ると笑顔で手を振るハルカさんがいた。
『ごめ~ん、この荷物持ってくれる?』
そこには大きな平たい四角のバッグがあった。
「これは何ですか?」
『照明機材が入ってるの。ヒロト君なら軽いっしょ♪』
持ってみると確かに機械が入ってる重さだったが僕には何て事ない。
『さっすが男の子♪』と言って肩をパンと叩かれた。
完全に子供扱いだけど、ハルカさんからすれば僕なんて子供みたいなもんなのかな。
 
「ところでどこで撮影するんですか?」
歩き出したはいいが、行き先を知らなかった。
『すぐそこのホテルよ』
「ホテル!?」
その単語に思わず足が止まりかけた。
「ホテルと言うと・・・?」
『この近くにミラージュってホテルがあるでしょ。そこよ』
「ミラージュって、確かラブホテル・・・ですよね?」
『ラブホテルだけど、取って食べたりしないから大丈夫よ(笑)』
冗談交じりに言われたが ホテルと言うワードがあまりに予想外過ぎて それ以上は言葉が出て来なかった。
5分も歩かない内に目的のホテルに着いた。
『ここに真っ白の部屋が一つだけあるの。さっき電話で確認したら空いてるって言うからさ』
 
ロビーに入ると部屋を選ぶパネルがある。
ハルカさんは迷わず504をタッチして
『さ、行こうか♪』とサッサとエレベーターの方に歩いて行く。
もう言われるがままに後を着いて行くだけの一人ブレーメン状態だ。
初めて入るラブホテル。
それも唐突にだ。
さっきまでの緊張感が否が応でも倍増する。
エレベーターはかなり狭く、2人の距離が必然的に近い。
ドギマギしながら目のやり場に困った僕はエレベーターの階を示すランプを凝視していた。
 
5階に到着して扉が空いたので、開ボタンを押してハルカさんを先に出させた。
『あら~けっこう紳士なのね♪』
「ぃゃ・・あの・・なんか自然に・・」
返事に困ってる僕を見て ふふっと笑ってトコトコ歩いて行く。
初めて会った時からずっとからかわれている感じだ。
 
『ここだね』
と言うハルカさんの頭上には504というランプが点滅している。
僕にとって未知の世界が扉の向こうにあると思うと、そのランプを見たまま少し固まっていた。
『そんなに緊張しなくて大丈夫だから~♪』
僕の心境を察したハルカさんが扉を開けて中に入って行く。

 
意を決して僕も無言で扉の中へ入った。
 

小さなインパクト part3

 
 勇気を出してLINEにメッセージを送った僕は落ち着かずに画面を眺めていた。
そう、僕にはメッセージの一つにしても勇気のいる行動なのだ。
なにせ女生とLINEするなんて家族以外では初めてなんだから。
けど、既読にもならないな。
まだ仕事中の様子だったし送るには早過ぎたかもしれない。
 
スマホを持ってると余計に気になってしょうがないので、気を紛らわすためにも買って来た材料でアクセサリー作りをする事にした。
春をイメージしたデザインで というザックリした依頼だが、それはそれで自由に出来るので嫌ではない。
桜のピンクとタンポポのイエローを組み合わせたブレスレットを下絵として描き上げてあるので あとは指先の作業だ。
やり始めれば集中できると思っていたが、それでもスマホが気になってしまう。
若干モヤモヤしながらも とりあえず作業を進める。
チャームを先に作成するためパーツと接着剤を用意する。
と、ここでスマホの着信音が鳴り、反射的に手に取った。
 
『楽しかったね♪また今度 機会があったらお茶しましょうか。アクセサリー作りは捗ってるかな?』
一瞬 見られてるのかとギョッとしたが、ハルカさんが僕の事で知ってるのは趣味くらいだから 何気にそれを言うのも当然と言えば当然か。
「ちょうど今 リピーターさんからの依頼品を作っていた所です」
『すごーい!プロだね』
不意にプロと言われて慌てて否定した。
「いえ、そんな大したもんじゃないです。ただ、僕の作品を気に入ってくれたみたいで」
正直、プロなんて言われて嬉しかったが この流れで謙遜しないわけにはいかない。
『いつか私も作って欲しいな♪』
当たり障りのない社交辞令というメッセージだったので
「そうですね、いつか作ってみましょう」
つい こちらもありきたりな返事をしてみたが、妙に上から目線な言い方をしてしまった。
『本当に!?やったー楽しみ♪』
何だか思った以上にリアルなリアクションだったけど、それは別に構わない。
製作は好きだし、嫌がられるなんて事は無さそうだ。
いつか・・・か。
また偶然に会うのを待たなくても連絡手段はあるから、渡そうと思えば渡せる。
それにすぐに取り掛かって完成させても、何だかそれはそれで必死感が出てしまうような・・・
何でも考え過ぎの癖が出てどうしていいものかハッキリしない。
一先ずアイデアが湧いたら下絵にしておこう。
今は先客のオーダーを優先しないといけないし。
そう思うと、作業に戻ってアクセサリー作りを再開した。
 
 
その夜、僕は夢を見た。
ハルカさんが知らない男性の前に座って股間を撫でている夢だった。
僕は透明人間のように傍らからその光景を眺めている。
股間を撫でているハルカさんは心なしか嬉しそうにも見えた。
覚えているのはこの短い部分だけだ。
起きてからハッとした。
初対面で僕の股間を撫でたんだ、他の男性に同じ事をしていても不思議じゃない。
考え始めると凄くモヤモヤした。
しかし気になるけど本人に聞くわけにもいかない・・・
僕の事を素敵だと言ってくれたけど、やっぱり自信の無い僕としては社交辞令だったと思ってしまう。
男性用の下着も売っている妙齢の女性だ、公私でこれまでにも大勢の男性と知り合ってきたに違いない。
やはり僕はからかわれたんだろう。
モデルの誘いもそうだったのかな・・・?
いや、でもあれはもし僕がイエスの返事をしていたら向こうも後から断る事になるから それは無いかな。
考えれば考える程、分からなくなっていった。
これまでの事で僕がハルカさんを意識している事は否定できない。
最初に触られた事は未だに腑に落ちないけど、考えて分かる物じゃないから軽い気持ちの悪戯だと飲み込んでおく事にした。
 
それからは偶然でもハルカさんに会う事が無く、平凡な日々が過ぎていった。
裏口から出入りしているようだし、ショップに行く頻度を増やしたとしても タイミング良く遭遇するわけもない。
自分からLINEをする勇気も無い僕は心のどこかで悶々としていた。
 
2週間ほどが経った時、ふとハルカさんからメッセージが来た。
写真付きのメッセージだった。
『モデルするとこんな感じよ~♪』
そこにはボクサーパンツを履いた男性の首から下の写真が添えられていた。
程良く引き締まった体の男性で、いかにもという印象の写真だとしか思わなかった。
 
「モデルさん、決まったんですね」
『まだ決まったわけじゃないよ。この人はとりあえずテスト撮影だけしてもらったの。
ヒロト君へのサンプルにもなるかなと思って送ってみたの』
 
まだ諦めてなかったんだ。
と言うより、やっぱりあの時の誘いは本気だったのか・・・
 
「格好いいですし、この人で決まるんじゃないですか?」
『ん~スタイルはいいけど、私は人柄が合わない感じだったから ちょっと微妙かなぁ』
「知り合いのお客さんなんですか?」
『ん? あー、だってこれ撮影したの私だもん』
「え!? ハルカさんがカメラマンなんですか? ぁ、女性だからカメラウーマンと言うべきでしょうか」
『あはは、そんな律儀な所も好きよ(笑)
プロのカメラマンを雇うのは費用かかるし、カメラ経験者の私がとりあえずやるの。小さな会社だしね~』
 
サラッと言われたが僕としてはかなり衝撃だった。
否が応でもハルカさんが下着姿の男性を撮影している光景を想像させられるからだ。
 
「モデルさんならスタイルさえ良ければいいというわけじゃないんですか?」
『確かにそうなんだけど、食事に誘われたりして私としては困る面もあってさ』
 
正直、複雑な心境になった。
知らない男性がハルカさんを狙っている?
それも下着姿を撮影する女性と その男性モデルという関係で。
何とメッセージしていいか悩んだ。
ハルカさんも大人な女性だ、そういう対処はちゃんと出来るはず。
でも本人は嫌がってる風だし・・・
 
「その人の他に候補はいないんですか?」
『他って言うと今はヒロト君だけよ』
他にいないのか・・・

「僕もテスト撮影してみていいですか?」
『本当に!?嬉しい♪じゃあ今度お互いの都合を照らし合わせて日取りを決めようか♪』
 
つい、勢いというか何とかしたい一心で言ってしまった・・・
でも取り消したりしたら それこそ格好悪いし何より失望させてしまうかも。 
 
僕が下着モデル・・・早まったような気がする・・・

 

小さなインパクト part2


 あの夜、汚してしまったパンツをこっそりとシャワーを浴びる時に自分で洗った。
不意に母親が入って来たら干してあるパンツを見られてしまうかもしれないから 扇風機で必死に乾かす自分が少し哀れにすら思えた。
 
きちんと付いていたタグに書かれていた社名を検索したら、意外にも最寄り駅の近くにあるビルだった。
母親の後輩が勤める会社なら近所でも別に意外じゃないか・・・
通学の度に知らずに前を通っていたんだ。
翌日、帰宅途中に何気にビルを見上げた。
6Fと書いてあったから、ビルの中の一室をテナントとして使っているのだろう。
窓にそれらしいロゴのような物が見てとれる。
オフィシャルのホームページは無かったから営業人員だけでやっているんだと思うが、よくそれで経営が成り立つものだと社会人ですらない僕なりに少し関心した。
それ以来、前を通る際にはビルを見上げるのが習慣のようになっている。
 
ある時、アクセサリー作りの材料を買うため 駅の裏側にあるショップに寄った後、店の前で例のビルから出て来るセールのお姉さんとバッタリ遭遇した。
 
『あら♪こんにちわ』
こっちに気付いたお姉さんに気さくに挨拶をされて一瞬だけ戸惑いつつも
「ぁ、どうも」と素っ気ない挨拶を返してしまった。
裏口から出入りしていたから今まで遭遇しなかったんだと理解すると同時に
僕はお姉さんと会うのを期待していたのか?と頭の中で変な自問自答をしていた。
 
『学校の帰り?』
「はい、ちょっと買う物があってこの店に寄ったんです」
 
店を少し眺めて あーなるほど という顔をしている。
僕の趣味を覚えていてくれていたのが分かって 何か少し恥ずかしいような嬉しいような気持になった。
 
『せっかくだし、少しお話でもしましょうか♪』
ニコニコと言うと僕の返事も聞かずに さっさと隣のカフェに入って行った。
何だかかなりマイペースな感じが母の性格と重なる気がする。
だから先輩後輩でウマが合うのかもしれないな。
 
店内の隅の席に座ると『何でもオーダーしていいよ』と言われたものの、特にお腹がすいている時間でもないのでケーキとコーヒーのセットを頼んだ。
お姉さんも別のケーキをオーダーした。
ショーケースにある中から出して来るだけなのか、それらはすぐに運ばれてきた。
 
何だか気まずい雰囲気を勝手に感じてケーキを一口食べると
『この前はごめんなさいね、下着とか別に興味無かったでしょう?』
と不意に指摘されて
「ぃ、ぃぇ別に大丈夫です」
と相変わらず味気ない返事しか出来ない自分が恨めしくもなった。
 
『先輩もきっと自分の下着とか興味ないと思ったんだけど、つい頼っちゃって。
そこにヒトロ君がタイミング良く帰って来たもんだから犠牲者が増えちゃったね(笑)』
と、特に申し訳なくも思っていない様子でコロコロと笑ったが、その顔は同世代の少女と変わらないくらいだった。
自分から何と発していいか分からないでいると彼女の方から再び話し掛けられた。
 
『あれから買ってもらった下着は使ってる?』
いきなりの直球な質問にかなり戸惑って
「あれからは・・・履いてないです・・・」とバカ正直に答えるのが精一杯だった。
『やっぱりそうよねぇ、興味ないって感じだったもの』
セールスをしている人には言うべきではなかったか・・と後悔しても遅い。
「ぁ、でもあの日はずっと履いてました」
自分なりのフォローのつもりだった。第一、本当の事だ。
『そうなんだ!ちょっと嬉しい♪』
なぜ僕の方が気を使うのか? 普通は逆なんじゃないかと思ったがマイペースな人に飲まれるのが僕の悪い癖だ。
 
『似合ってたけどね~、それにしても恥ずかしそうにしてるヒロト君が印象的だったわ』とクスクスと笑っている。
「そりゃ初対面の人の前でパンツ姿は恥ずかしいですよ・・」
『でも初対面じゃないかもよ』
「えっ!?」
『1ヵ月くらい前に駅前で盲導犬の募金活動してる人達がいたけど、ヒロト君あれに募金してなかった?』
「はい、しました」
『やっぱり! 試着の時に もしかして・・・って思ったんだけどね。そういう流れじゃなかったし。だから初対面じゃないのよ♪』
「ぃゃ~それって ほぼ初対面と同じでは?」
『あはは、確かに♪』
また屈託なく笑う。
 
「それにしても僕みたいな地味な人間をよく覚えてましたね」
『若いのに真面目な子がいるなぁ でも若いからこそ真面目なのか。 なんて思って見てたの。それにヒロト君は素敵よ♪』
こんなに分かり易いお世辞があるだろうか。
自慢にはならないが、高校の時に室長を決める投票で唯一男子で0票だった僕だ。
存在感の薄さや地味さには変な自信がある。
百歩譲ってお世辞じゃないとしたら また僕をからかっているんだ "あの時" のように!
 
『だってヒロト君、とても綺麗な体してたから♪』
「え?体ですか・・・?」
全く予想もしてなかった方向からの指摘に一気に頭の中が混乱した。
『無駄な贅肉が付いてなくてスラっとしてたし、それにとっても綺麗な肌だったよ。若いって凄いなぁなんて思ったの』
「自分では特に思ったこと無いですけど・・・」
『スポーツ何かしてたんでしょ?』
「小、中、高とバスケをしてました」
『それでか~、スタイルいいもんね♪』
 
男女逆だったらセクハラと言われかねない内容だが、褒められるという経験が皆無の僕は照れると同時に何だかムズ痒かった。
思えばこの人は僕の股間をさり気なく触ったんだ。
こんな会話、お姉さんからすれば何ともないのかもしれない。
と言うか また僕をからかっているのか?

『そうだ!ヒロト君、モデルしてみない?』
唐突な言葉に頭が真っ白になってポカーンとしていた。
「・・・モデル?」
『そう、カタログを作る予定なんだけどモデルがいなくてねぇ。ヒロト君ならスタイルいいからピッタリだわ♪
いずれはホームページも作って販路を拡大しようって話になってるのよ』
「ぃ・・いやいやいやいや、僕がモデルなんて無理ですよ!」
つい強い語調になってしまったのも当然だ。
この僕がモデルなんて妄想でもしたことがない世界なのだから。
 
『別に顔は出さなくていいのよ。首から下だけだから恥ずかしくないよ。それに先輩の息子さんなら私も安心だし』
「いや、顔を出さなくても恥ずかしいですよ。こないだの試着だって恥ずかしかったんですから。無理無理無理・・・」
半ばパニックになった顔を左右にブンブン振っていた。
 
『そっか~残念。ピッタリだと思ったんだけどなぁ。でも急に言われても確かに難しいよね』
内心、そりゃそうでしょと思いながら「すみません」と小さな声で謝った。
それにしても何て事を言い出すんだ、本気なのかな?

その後はケーキ美味しいねくらいの他愛ない会話を交わしただけだった。
帰り際に 『もし気が変わったら連絡して♪』と名刺を渡されて、困りながらも一応は受け取った。
 
帰宅するとベッドで大の字になり、ボーッと今日を振り返っていた。
心のどこかで会いたいと思っていた事は 今日の出来事で自覚した。
まぁ一度はオナニーの想像をした対象だ、考えてみれば当然かもしれない。
しかし・・・何だろう
2回しか会った事がないのに、2回とも妙に疲れるというか 表現としてはおかしいがトラブルメーカーのような印象を持ってしまう。
すっかりペースに飲まれてカフェで御馳走になってお礼も言わずに帰って来てしまった。
 
名刺・・・一之瀬遥、ハルカさんって言うんだ。そう言えば名前知らなかったな。
いかにも下着のセールスらしく、薄ピンクのカードに名前と電話番号が書かれている。
なんだか風俗店の名刺っぽい気もしたが、そもそも僕は風俗店には行った事がない。
仕事用のスマホなのだろうか、LINEのIDまで載っている。
とりあえずお礼を言っておかないと、あくまでもお礼だけ。
しばらく悩んだ挙句、そう自分に言い聞かせるようにしてメッセージを送った。

小さなインパクト part1


 大学に入って2ヵ月になるのに、これと言って大学生らしい事を何もしていない。
友達が出来てないので一度も会話すらしていないくらいなのだから。
キャンパスライスは自動的にイメージしていた物になると、勝手な期待を抱いていただけで
人と話すことも苦手な引っ込み思案には そう都合良くはいかないのが現実だ。
せめて実家から通うのではなく、一人暮らしが必要な大学を選ぶべきだったかと後悔すらしている。
高校まで続けたバスケもレギュラーにもなれず卒業と同時にやめてしまったが 今からでも見学に行ってみようか・・・
と、想像だけしている。
きっと行くことは無いだろう。
 
今日も必修と選択科目をこなしただけで帰路についている。
玄関を開けると見慣れない靴がある。
赤いエナメルの派手なデザインだから すぐ目に付いたが我が家でこんな靴は姉も母も履かない。
僕の帰宅に気付いた母がリビングから声を掛けた。
ヒロト、ちょっと来て』
 
呼ばれるままに部屋に入ると案の定、母の友達らしき女性がいた。
サバサバした性格の母は友達が多い。
「こんにちわ」と、ありきたりな挨拶をすると その女性は典型的な営業スマイルで
『こんにちわ♪ 素敵な息子さんね』
と社交辞令と丸わかりの挨拶が返って来た。
 
『この子は私の後輩、今は下着のセールスをしてるの。
あんたの下着も買ってあげるから ちょっと服を脱ぎなさい』
「え!?いきなり何?」
『試着するのよ、別にここで裸になれって言ってるんじゃないから 隣の部屋でこれを履いてきなさい』
と黒いパンツらしき物を渡された。
「パンツ姿になれって言うの?」
『何恥ずかしがってるのよ、下着なんだから当たり前でしょ。いい歳して。ほら早く着替えて来て』
いい歳という言い方は違うような気がするが 母の無神経とも言える物言いに結局は流されてしまうのが我が家のパターンだ。
 
カバンを置いて下着らしき物を握って渋々 隣の部屋に移動した。
リビングでは2人が世間話で盛り上がっている。
それを耳にしながら服を脱いだが、渡されたのは所謂ビキニパンツだ。
こんな物、履いた事ない。
第一、地味な少年が身に着ける物じゃないと思うが母が付き合いで買ってあげるだけなんだろう。
 
『履いた?ちょっとこっちに来なさい』
「いいよ、もう履いたし分かったから」
『いいから来なさいって』
 
またも一方的に言う母親に気圧されるように スゴスゴと2人の前に出た。
初対面の女性の前に 初めて履いたビキニパンツだけの姿で立っているのだ。
平気なフリはするが顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。

『あんたそれでいいね』と大して関心無いように言い切られて 「ぅ・・うん」としか言えなかった。
内心、確認すらいらなかっただろうと声にならない抵抗をする。
セールスの女性は つつっと僕の横に移動してきて正座のまま下着の説明を始めた。
『ここに新しい技術の繊維が使われていて跡になりにくいの』
『それとここに・・・』
僕はそんな説明を聞かされるより早くこの場を去りたいという気持ちでいっぱいだった。
母親だって ふーんという感じで元よりどうでもいいという風だ。
その直後、母親がセールストークで並べられた下着に目を移した時、女性にサラッと股間を撫でられた!
偶然 手が当たったという流れを装っていたけど、今のは明らかに故意だ。
一瞬の出来事で僕はあまりにビックリして体は硬直したまま声も出なかった。
当の女性はこちらに目も合わせない。
 
「じゃあいいね」と僕は言い捨てるように隣の部屋に引っ込んで急いで服を着た。
リビングに置いたカバンを拾うと不愛想に2階の自室へと上がった。
階段を上がりながらも2人の会話が耳に届く。
 
『息子さんはあれで良かったのかしら?』
『いいのよ、どうせ学校から帰ったら部屋でアクセサリー作るだけなんだし』
 
僕の唯一続いてる趣味をバラしている・・・
家族しか知らないと思っていたのに、意外といろんな人に知られているのかもしれないと思うと、
さっきまでの恥ずかしさに加えて自分が小さくなってしまいそうだった。
 
部屋に入るとドアに背中をもたれさせたまま自分の状況をドキドキしながら整理した。
今、ズボンの中は初めて履いた黒のビキニだ。
僕がビキニ・・・一体何のためにあるんだと改めて考えるとえらく妙な気分になった。
それにさっきの女性、なんであんな悪戯を・・・
恋人も出来たこと無い僕が 女性に股間を触られるなんて ほんの一瞬の出来事とは言え大きな衝撃だった。
母親の後輩と言っていたけど見た感じでは僕の15才くらい上だった。
いかにも地味な僕をからかったんだろうか。
撫でられた瞬間がグルグルと頭の中で繰り返し再生される。

 

何となく階下が気になって耳を澄ませてみるけど、流石に会話は聞こえない。
小一時間ほどすると玄関の開く音がした。

そっとカーテンの隙間から下を見ると、赤いパンプスを履いた女性が帰って行く姿が見えた。

 
僕はその夜、つい触られた瞬間を思い出しながらビキニパンツを履いたままオナニーをした。
 
 

深淵 (完)

 
 ~day 3 前夜~
 
先生から渡された小箱が気になって仕方なかったけど、言い付け通り前夜まで待った。
怖いわけじゃないけど不安がゼロというわけでも無い。
 
小箱はテープで封がされた上に紐で上品に縛られている。
紐は丁寧に解き、テープはカッターで切って開けてみた。
メモの下にいくつかの袋が入っていた。
 
好奇心が勝って衣装と言っていた荷物の方を先に開けてみる。
 
ベージュのレオタード、ストッキング、黒いラバーのTバック、最後は・・・片面が黒で片面が赤いビロードのような黒い帯、目隠し?
てっきりエロティックな衣装だと思ったけど、意外にそうでもないような。
そんな印象だった。
メモに目を通してみる。
 
 
  【メモ】
着る順番があります。
まずストッキングを直に履いて下さい。
その上にレオタード、更にその上にTバックです。
上着等の服装はご自由にどうぞ。

ご自宅からこの衣装を中に着用して頂くだけです。
他の道具類は私が用意しておきますので。
 
*)当日は顔や髪もドロドロになりますから、簡単なコスメのセットを持って来るといいでしょう。
 
 

これを私に着て欲しいのか・・・
アイテムはソフトだけど、メモを読む限り着用の仕方に癖がある感じだ。
リアルに想像すると 思っていた以上に卑猥に思えてくる・・・
それに最後のドロドロという部分も気になる。
しばらく時間を掛けて考えてみたけど、考える程に何だかいやらしい光景が浮かぶような。
全然ハードな指示じゃないけど、ドキドキしてしょうがない。
いや、道具とか書いてあるし もしかしたら当日はハードなのかもしれない・・・ 
考えても分からないけど、どうしても想像に走ってしまう。
先生が私のために用意してくれた衣装、正直 明日と言わず今から着て寝たいけど きっと汚してしまうという自信がある。
明日はいったい何をしてもらえるのか。
先生はどんな事を考えてるのか。
用意からして明らかに施術とは関係ない、完全にプレイとしか思えない。
ついエロティックな夢を見てしまいそうだけど 今は明日に備えて寝るしかない。
 
 
眠れるかな・・・
 
 
 
  ~day 3~
 
約束の時間ピッタリに彼女はやってきた。
ブラウスと膝丈のスカート姿だ。
静かにドアを開けると、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
そのまましっかりと抱き締めると ごく僅かだが小刻みに震えているような。
過去2回と全く違う展開だから多少不安があるのも理解できる。
耳元で
『あなたと会えない一週間が辛かった。今やっと会えて嬉しいです』
私の背中に回した手に力が入った。
「私も待ち遠しかったです」
しばらくの間、2人は抱き合った。
顔を離して見つめ合うと照れて赤くなった表情がいつもながら可愛い。
 
「今日は白衣じゃなくてスポーツウェアなんですね」
『はい、"施術" じゃないですからね』
という私の言葉で現状に改めて気付いたかのように表情に少し緊張が走ったのが伝わってきた。
もう一度抱き締めると
『基本、私の指示に従って頂きますが 前回も言ったように私はあなたを癒したいのです。

今日私がする事は全て "あなたのため"  という自負があります。

どうか安心して下さい』
と話すと落ち着いたのか小刻みな震えも止まった。
 
彼女は私の胸の中で大きく息を吸った。
「この前と違う先生の匂い・・・」
『そうですね、今日がリアルな私だと思います。もちろん、例の衣装は着けて来てくれましたよね?』
と聞くと、「はい」と素直な返事が聞けた。
 
私は2歩下がり
『では見せて下さい』と告げると真っ直ぐ彼女を見据えた。
彼女は意を決したように無言でボタンに手を掛けた。
当然、予測していた展開だっただろうが 何となく今までと違う恥ずかしさがあるのか ブラウスのボタンを外す手が少しモジモジした動きになっている。
前回、生まれたままの姿になって激しく絡み合ったというのに、今日は相手の指示した衣装を着させられて それを披露しようというのだ。
通常とはまた違うタイプの羞恥心がある。
こちらとしては脱ぐ段階から期待通りのリアクションで早くも嬉しさが込み上げて来る。
 
前ボタンが全て外されるとベージュのレオタードが顔を出す。 
透けてはいないが生地が薄いため、ブラウスを抜き取る際 後ろに腕を回すと たわわな乳房の形がクッキリと浮き上がる。
様子を伺うようにチラリと此方を見る。
『下も』と指示をすると これも無言で従ってくれた。
スカートのホックを外し、ファスナーをゆっくりと下げていく。
『スカートはそのまま下に落として下さい』と言うと従順にストンと足元に落とした。
下半身が一気に露出して 彼女は思わず股間の前で両手を組んで足をモジモジしている。
卑猥だ、黒のTバックが非常に卑猥だ。
『そのまま』と言うと、私は彼女の周りをゆっくりと回りながら嘗め回すように眺めた。
レオタードの上に履いているため、お尻は露出していないが その形と存在をTバックが強調している。
正面に戻ると改めてしげしげと眺めた。
光沢のストッキングが更に色っぽい。
 
『やらしい・・・これは変態ですね』と心の声がそのまま出てしまった。
「これは先生が・・・」
『嫌な衣装でしたか?』
「・・・ぃぇ・・嫌じゃないですが・・・」
『何度も言うように、少しでもあなたの嫌がる事はしたくありません。この衣装はどうですか?』
「・・・その・・・」
『あなたの感想を聞かせて下さい』
「先生また意地悪ですっ・・!」
『衣装の感想は???』 
「・・・何だか・・・裸より恥ずかしいような・・・」
消え入りそうな声で答えてくれたが 完全に下を向いてしまった。
顎に手を添えてグイッと上を向かせ
『とてもいやらしくて、とても美しいです』 
「本当ですか?」
『はい、会う度にあたなの外面も内面も美しくいやらしくなっていきます』
「嬉しいです」
 
顎を掴んだまま聞いた。
『ところで、もしかしてなんですが既に濡らしていませんか?』
「そんな・・わかりません」
『ご自身が分からないという事はないでしょう。とぼけるなら私が確認しないといけないですね』
と言うと、Tバックの脇から指を一本入れてスリットを触った。
「あっ・・」という声と共に彼女は少し腰を引いたが、一瞬の感触で十分だった。
指を潜り込ませても それはレオタードとストッキング越しだ。
それなのに私の指には愛液が付着している。

『これだけ濡らしていて気付かないなんて事がありますかねぇ』と、その指を舐めた。
反射的に彼女がその手を止めようとしたが遅い。
『今、阻止しようとしたようですが、今日あなたが分泌する液も全て舐め取りますからね』と宣言すると彼女は赤くなった顔で
「はい・・」と返事するのが精一杯だった。 

さっきまでの不安が残るような表情は消えて 今や羞恥心しか見えない。
羞恥心が上回った? いや、塗りつぶしたと言うべきか。
 
彼女の手を引いて姿見の前に立たせた。
私は後ろから彼女の肩に手を掛けてるが、頭一つ分以上は違うので 幼気な少女を捕まえた親父のようだ。
 
当然、着用した時に自宅で見ているだろうが改めて聞いてみた。
『どうですか?ご自身で見てみて』
「すごく・・・やらしい・・です」
『明言しますが、とても美しいですよ』
そう言うと彼女の両側から腕を回して乳房を支え上げた。
さっき見えたように乳首まで形をハッキリと浮き上がらせ、自然と彼女は体を縮こませるような仕草を見せる。
『目を逸らしてはダメですよ、あなたもしっかりと見るんです』
「・・・はい」
彼女は素直に従って改めて2人で鏡を見る。
『ちゃんと言う事を聞いていい子ですね』と言うと同時に両方の乳首を人差し指でサッと刺激した。
見開いた目で鏡を見つめたまま ビクンッと体を震わせる。
『そのまま鏡から目を離しちゃダメですよ』
と言うと、彼女の髪を耳に掛け 軽く噛んで乳房を愛撫した。
「はぁぁぁぁ・・・・」
愛撫され 悶える自身の顔を見た経験はあるのだろうか。
仮にあったとしても、ホテルの鏡で裸の状態での事だろう。
 

耳を舐め 乳房の愛撫を続けていると、彼女が両手を後ろに回して私の肉棒をズボン越しに触り始めた。
「先生・・・こんなにガチガチ・・。いつからですか?」
『あなたが服を脱ぎ始めた時からです。それにしても私のを触るようにとは指示してませんよ?』と言うと
「すみません」と手を引っ込めた。
『謝罪禁止は続いてます。怒ったりはしないので今日も謝罪無しでいきましょう』
「はい」
『鏡を見続けて下さい』と言うとソフトな愛撫を続けた。
衣装を身に着けただけで濡らしていたのだ、今頃はビチャビチャになっている事だろう。
徐々に喘ぐ声が大きくなってきた。
更に陰部への愛撫を待っているようだが触らない。
首筋へ舌を這わし、レオタードの上から乳房をゆっくりと柔らかくまさぐる。
鏡へ目をやると眉間に皺がよって眉尻は下がっている。
感じ過ぎないように堪えてるようにも見える。
たまらない・・・ この子はもっともっと魅力を増すはずだ。
 
『食べてしまいたくなるほど美しく淫らですよ。もっと綺麗になりたいですか?』
「はい、なりたいです」
少し上ずった声が彼女の興奮と期待を伺わせる。
 
私は彼女を立たせたまま次のアイテムを取り出した。
光沢の強い真っ赤なパンプス、ヒールは9cm。
足のサイズは2回も施術をして把握していた。 
 
『これを履いて下さい』
そう言うと、彼女がグラつかないように後ろに回って腰を抱くように支えた。
言うまでも無いが彼女の丸いお尻に私の股間をピッタリと合わせる。
履く動作に合わせて2人の腰が刺激される。
心地いい・・・彼女の心までも伝わって来るようだ。
両足を履き終えると再び鏡に向かって立たせた。
黒いTバックに真っ赤なパンプス。
アクセントカラーになって彼女の卑猥な美を引き立たせる。
これで腰の位置がだいぶ近付いた。
 
『そのままお尻を上下させて私に擦り付けて下さい。私がいいと言うまでです』
最初は、ぇ?という表情を見せたが素直に動き始める。
多少ぎこちないが そのぎこちなさが かえっていやらしく見え、2人の世界感をグングン高めてくれる。
彼女には抵抗あったのだろうか?
例えあったとしても、擦り付ける力は強くなってきている。
場所もえらくピンポイントで合っている。
その動作のまま、両側から手を伸ばし再び乳房を包んだ。
まるで困った顔のような表情で無言のまま悶える彼女。
 
自らお尻を男性の股間に擦り付ける女性、その女性を後ろから揉みしだく男性。
今のところ全然ハードさは無いが この構図にそそられる、非常にそそられる。
2人で一緒に眺めているというのが特にいい。
彼女にとっては見させられてるワケだが。
 
高ぶった快感で彼女の声が漏れそうになったタイミングを見計らって中断する。
『こちらにお尻を突き出して、"ゆっくりと" Tバックを降ろして下さい』
特に抵抗する様子もなく、指示通りに降ろしていく。
私は片膝を付いて、目の前20cmで その光景を眺める。
その様子も彼女は鏡越しに見えている。
『ストップ、そこからまた上げて下さい。そして私がいいと言うまで繰り返して』
少し困惑したのか、一瞬動きが止まったが再び引き上げ、また下げる彼女。
サイズに余裕がないため、その度にお尻がプリンッと強調される。
 
「あの・・・これは一体・・・」
『先週、服を籠に入れる時 自然を装って私にお尻を突き出したでしょう? あの光景が目に焼き付いて忘れられないのです。』
意図的にしていた事がバレていたのを知って彼女の動きが止まった。
『もう一度です、上げ下げして』とリクエストした。
お尻を突き出し脱ぎ履きするという同じ行為でも、バレていたのを知った後では羞恥心が増す。
真っ赤な顔で従う彼女を抱きしめたくなったが、我慢して代わりに両手でお尻をギュッと鷲掴みにした。
私が顔を突っ込むと思ったのか、とうとう彼女は目を瞑ってしまった。 

無理矢理でも鏡を見させてもいいが、2人の浸蝕レベルからして今それをやると恐怖心を与えてしまうかもしれない。
今日はまだ安全を確信できる範囲に留めておこう。
 
私は立ち上がって後ろから抱き締め、顔だけを振り向かせて熱くキスをした。
『やらしかったですよ、素晴らしい前菜でした』
「ありがとう御座います」小さな声で答える彼女は まるで淫靡な世界を知らない初心な少女のようだ。
 
『目隠しはバッグに入ってますよね?出して下さい』
「はい」と返事をして取りに行く後ろ姿を食い入るように目で追う。
歩くたびにTバックに強調されたレオタード越しのヒップがプリンプリンと揺れる。
その様は男を獣にしてしまいそうな魅力を発している。
戻って来た彼女は両手で行儀良く目隠しを差し出した。
受け取ると後ろに回って、赤い面を表にして今日も彼女の視界を遮断した。
赤い目隠しとパンプス、輝くラバーショーツ
モダンカラーで仕上がっている。 
美しい・・・ 
最初に脱いでもらった時のように、また彼女の周りをゆっくりと一周して眺めた。
 
彼女の耳元で
『これから意思の疎通が難しくなりますが指示に従ってくれますか?』と聞くと
「はい」と、迷う様子もなく答えてくれた。
『いい子ですね』と一言残し、隠してあった箱を出した。
中にはいくつかのアイテムが入っている。
その中から口枷を取り出した。
 
『口を大きめに開けて下さい』
素直に開けた口にカポッとギャグボールを入れる。
意外にも驚いた様子は見せないが鼻息は心なしか荒くなっているようだ。
もしかして期待していたのか?
どちらにせよ事はスムーズに運ぶ。
後頭部でベルトを留めると それまで放っていた淫靡な美しさから一気に変態的な格好になった。
しかし、これはこれで欲望に純粋な様は美しくもある。
そして もう一つアイテムを取り出す。
コードレスの電気マッサージ器だ。
 
手に下げたままスイッチを入れてみる。
ブーンという音で彼女なら分かったはずだが、それでも驚いた様子はない。
しかしここから彼女の予想と少しだけ違うはずだ。
 
『手を頭の後ろで組んで 横に歩幅を大きく開いて下さい』
ボールを噛ませてるので無言で従う彼女。
開いた内股にはビッチョリと愛液が広がっていた。
たまらず後ろから陰部を手で撫でた。
少しお尻を突き出してきたが、これはちょっとばかり違うのだ。
 
『今のは出来心の悪戯です。そのままガニ股に腰を落として下さい』
流石に躊躇したのか それとも指示された姿勢をイメージ出来なかったのか少しだけ止まったが、それでも素直に従ってくれた。
『辛い姿勢ですが、少しの間だけこのままで』
そう言うと、陰部に電マを当てると同時にスイッチを入れた。
「ハウッ・・・」
ボールのせいで喘ぎ声もたどたどしい。
電マはパワーがあるから痛くなりがちだが 今はラバーショーツ越しだからスイッチは中レベルでも大丈夫。
 
『さぁ、腰を振って自ら擦り付けるんです』
これは従わないかもと思ったが、ギャグボール越しに「はへはへ」言いながら腰を振り出した。

初めての行為に加え、陰部への刺激で若干ぎこちなさはあるが この態勢で腰を自ら振るという卑猥さと言ったら感動するレベルだ。
今回がまだ3度目の逢瀬だというのに この素直さに私は愛されているとすら感じる。
彼女はその気持ちと元来の被虐性によって腰を振っている。
純粋さと愛情、その2つが共存するからこそ この魅力なのだ。
 
1分と経たずに足は辛くなってきたようだ。
思わず下を向いた際に口から涎が糸を引いて垂れる。
そのタイミングを見計らってグッと電マを強めに押し付けた。
「はぉ!」と唸って彼女はその場にへたり込んでしまった。
スイッチを切り
『よく頑張りました』と言うとお姫様のように抱え上げ 施術台に寝かせた。
 
今回、彼女の愛情を感じたのは2度目だ。
実は施術台は力士用の2倍サイズに替え、周囲にはシートを敷き詰めてあるが 彼女がやって来た時、その光景を見ても質問すらしなかった時だ。
その時は私を信用してくれている証と同時に愛情でもあると感じたが、それは間違いではないかもしれない。
しかし施術台には更に細工を施してある。
裏側にチェーンを固定できる金具を設置したのだ。
 
ガニ股で太腿に負担を強いたので少し揉んであげた。
はぁはぁと息をする彼女を尻目に私は次の道具を取り出した。
チェーン付きの手枷と、同じくチェーン付きの足枷だ。
チャラチャラと鳴る音で彼女はそれが何かを察知したかもしれない。
『頑張った可愛い子にはご褒美をあげますね』と告げると ややバンザイをする形で手首に装着しチェーンを台に固定した。
足も同様にМ字開脚をする形で固定した。
 
傍目には不格好にも見えるこの姿勢。
しかし、より高みへと昇ろうとする2人によって構築された世界の中では この上なく美しいのだ。
誰にも理解されなくていい、私達2人さえここに浸ることが出来ればいいのだ。

 
私は無言で彼女のラバーショーツに手を掛けると陰部が見えるか見えないかの位置にズラした。
さっきの電マを手に取ると、ショーツと陰部の間に挿し込んだ。
そして再びショーツをグイッと腰まで戻した。
電マが股間に固定され、あたかも生えているかのようになっている。
更に最後の道具を取り出す。
施術台の下に隠してあった洗面器いっぱいのローションだ。
それを片手にすくうと彼女の胸に塗りたくった。
今ではこの塗る行為だけで聞こえ辛い喘ぎ声を漏らす。
 
今度はラバーショーツ越しではないため、電マのスイッチは弱にしてスイッチを入れた。
ピンポイントに固定されてるが、足の自由も聞かないため 多少腰が動いてもズレる事はない。
スイッチと同時に
「ほごぉぉ」と半ば悲鳴のような声が出る。
耳元で
『痛いですか?』との問いに首をフルフルと振った。
『途中、ビックリするような事が起こりますが それもあなたのためです。私を信用してくれますか?』と聞くとコクコクと頷いた。
完全に信用してもらえてるのか、早く次の快感が欲しいのか・・・
何にせよ、心の準備は与えた。
私は彼女の頭の側に立つと、レオタードの上から遠慮なく両の乳房を揉みしだく。
乳首をじらしたりはしない、最初からローションの滑りを使って これでもかと揉みしだく。 
ニチャニチャと立つ音、電マのブーンという音、そして彼女の獣のような喘ぎ声が部屋中に響き渡る。
今や顔を一瞬横に向けただけで涎が流れ落ちる。
私はその度にそれを逃がすまいと指ですくって舐める。
ギャグボール越しの喘ぎ声はもはや 「おおぅおおぅ・・・」と普段の彼女に似つかわしくない程の本能的なモノになっている。
私はこの光景を心の底から楽しんでいる。
外の世界では慎ましく品のある彼女が、今 目の前で私に好き勝手され 獣と化しているのだ。
それも彼女の受け入れた姿で。
いや、受け入れたと言うより彼女の本来の姿だと言っていいかもしれない。
彼女の全ての反応がそれを示している。
被虐性とは かくも愛おしいモノなのだ。
自分では脱げない殻をパートナーが排除する。
そしてそこに現れるのは純粋な彼女。
もし私が芸術家だったら この全ての瞬間を切り出し、永久に保存するだろう。
 
自由が利かない体勢で腰が蠢き、顔は嫌々をするようにせわしなく振られている。
彼女が 「ふぐぅぅぅぅぅ あはぇぇぇ」と喘いだ時、ショーツの中で振動を与え続ける電マの辺りからジャジャジャジャとおかしな音が聞こえてきた。
潮を吹いたのが分かったが電マは自動的には止まらない。
彼女の頭越しに体を屈め、揉みしだく乳房をレオタード越しに舐め回した。
彼女の声が 「うぅぅ うぅぅ」と上ずってきたタイミングで強めに乳首を同時に摘まむと
「へああああぁぁぁぁぁ・・ぁ・・ぁ・・・」と首をのけ反らせイッてしまったが、まだ刺激は止まらない。
両手は乳房を揉みながら、私は彼女の耳を舐め 穴に舌を入れた。
舐める音が脳に直接響くように聞こえているはずだ。
私は舐めながら息遣いも加えてみた。
オーガズムを迎えたばかりだというのに、「おおぅ おおぅ」という喘ぎ声は疲れを知らないかのように漏れ続ける。
片手は乳房の愛撫を止めず、片手で脇や首筋を愛撫した。
普段ならば くすぐったいだけの部位も 感極まってる時は全て性感帯になる。
いや、元々全てが性感帯なのだ。
殻を剥ぎ取ったからこそ、本来の姿が露出している。
「おおおおおおぉぉぉ」と腰の痙攣が早くなった。
今だと思った私は
『では いきますよ』と声を掛け、洗面器のローションを顔を中心に上半身にぶち撒けた。
ギャグボールの隙間から入ったのか、ゴホッゴホッと咽て唾液交じりのローションが顔の周りに飛び散った。
私は零すまいと彼女の顔中を舐め回した。
合図が耳に届いていたかどうか分からないが、ぶっかけた時も我に返る様子はなく悶え続けていた。
再び彼女の耳をベロベロと舐め、乳首の位置をピシピシと指で弾くと 雄叫びのような声を上げ全身を震わせた。
 
一旦、電マを止めて上半身のローションで体中をこねくり回していたら何か言いたいのか ホゴホゴと声を漏らした。
ボールを外してあげると
「先生のも・・・・ここにお願いします」と懇願された。
私はビキニパンツ姿になると施術台に乗り、彼女の顔に股間をくっつけた。
未だに腕は拘束され、視界も無い彼女は 愛おしいモノを待っていたかのようにパンツ越しに硬くなった肉棒を咥え頬擦りを繰り返している。
まるで喉を涸らした砂漠の放浪者の如き食いつき具合だ。
「お願いです・・どうか口に・・・」との言葉に誘惑され、私は肉棒を取り出し彼女の口に添えた。
と思うが早いか、彼女は一気に喉奥まで飲み込んだ。
グルッという音が喉の辺りから聞こえた。
手は拘束されているため、必死に首を使い私のいきり立ったモノを口だけで愛撫している。
私はたまらず乳房に片手を伸ばし揉みしだいた。
一心不乱に私の物を咥えて味わう彼女が愛おしく、もう片方の手でローションまみれの顔を撫で回した。
ボールは外したが代わりに肉棒を咥えているため、先程と同じように ん~ん~と喘いでいる。
ただでさえ特別気持ちのいい彼女の口だ、このままでは私が果ててしまう。

私は彼女の口から一物を引き抜いて、ビキニパンツに収めた。
最後まで吸い付いていたため、抜く瞬間にチュポンッと音がした程だ。
電マを床に置き 足枷、手枷を外しラバーショーツも脱がす。
目隠しは外さないままだから まだ視界は効かない。
はぁはぁと息をする彼女の横に寝そべり
『私の腰に跨って下さい』と指示をすると、ヌルヌルの体を上手く使ってゆっくりと上になった。
騎乗位の体勢だが、私はパンツを履いているし彼女の着衣はそのままだ。
彼女の両手をガッチリ握りしめると
『さっきのように腰を振って擦り付けるんです』と指示をした。
申し合わせたかのように、お互いの性器の位置は最初からピッタリと合っている。
彼女は一回腰を引いただけでビクンと体を震わせた。
まだ余韻が続いているから当然だ。
『続けて』と言うと電マの時と違い、私が下から支えているからか とても器用に腰を振り出した。
「あぁぁぁ あぁぁぁ~」と艶めかしい喘ぎ声が 返って新鮮に感じる気がした。
私のパンツ、彼女のレオタードとストッキングという3枚の壁に隔てられているというのに、お互いが一つになったかのような一体感がある。
明らかに挿入時とは違う、精神的な快感が2人を襲う。
お互いの感性が交わって1つの深い穴のような世界に墜ちていく。
 
1~2分腰を振っていた彼女が
「先生・・・私もう・・・」
と言うとレオタードの股布の部分を掴むと横にズラした。
これ以上 焦らすのは むしろ冷めてしまい兼ねないと思い、私は彼女のストッキングを破いた。
滑りやすくなっているストッキングでも私の腕力なら容易い。
ローションか愛液か分からないほどグチョグチョになった性器が露わになった。
既に私のドロドロになっているパンツを彼女が掴んで乱暴気味に一気に下げる。
彼女は片手でしっかりと私の物を捕らえると その上にゆっくりと腰を沈めた。
グリュッという感触と共に一番深いところまで到達した。
「はぁぁぁぁ」と声を上げた彼女は味わうかのように 数秒止まった。
私の胸に手を置き自身を支える彼女。
私はヌルヌルと魅力を発する乳房を下から支え、私の番だとばかりに揉みまくって堪能する。
最初から首をのけ反らせ天井に向かって激しく喘ぎながら どんどん腰の動きが激しくなっていく。
前後に腰を振り、時に上下に振り まさに乱れに乱れた。

より快感を求めてか、彼女が体をのけ反らせたため ヌルヌルの台から滑り落ちないよう私は彼女とガッシリと腕を繋いだ。
彼女が ひたすら快感のためだけに集中できるようにと。
突っ張ったまま腰を振り続け、一際大きな声を出したかと思ったら全身をプルプル震わせて動きが止まった。
3度目のオーガズムだが、まだ終わってない。
私は上体を起こし彼女を抱きしめた。
対面座位のままお互いに口を求め、吸い合い、ネチョネチョと音がするほど舌を絡ませる。
断言してもいい、明らかに口は性器である。
背中に回された彼女の腕は力強く、頬と耳にには激しい鼻息を感じる。
私の両手は彼女のお尻を 指が食い込むほどに鷲掴みにしていた。
 
息が落ち着く前に彼女を後ろに倒し、正常位の体勢になる。
こっそり手にしていたギャグボールを再び彼女の口に装着させた。
腰をしっかりと掴むと今度は私が腰を振り始める。
レオタードもストッキングも着ている状態での挿入光景は 裸の数倍エロティックだ。
愛液が絡みついた陰茎は攻撃的で 幾度となく彼女の中へと深く侵入していく。
その度に彼女の口からは普段とは懸け離れた獣のような声が発せられる。
ボールの奥から出る「おおおおぉ おおおおぉ」という咆哮は私の耳から脳まで痺れさせる魅力を備えている。
たまらず上半身を合わせ、彼女の鼻を頬を首筋を舐めていく。
全てが私の物だ、離したくないという願望に全身を乗っ取られたようにしがみついた。
彼女は両腕を私の背中に回し、腰を足で挟んで後ろで絡ませた。
俗に言う大好きホールドという体勢だが、これが2人の快感と幸せを表していると感じる。
お互いを求めるあまり、これ以上ないという密着具合を生み出している。
途切れる事のない強烈な快感により、自分にもオーガズムがやってくるのが分かる。
 
『私もイキそうです、足を』と告げても脳内トリップしていて頭に入っていかないのだろうか、彼女が足を外す気配がない。
だが私の腰も止まらない、脳も体も彼女を求めているのだ。
『イキますよっ!』再び、今度は強く告げたが それでも足はガッシリと絡まったままだ。
もう無理だ、と思った次の瞬間 全身が痺れるほどの快感と共に彼女の奥に放出してしまった。
 
はぁはぁと息をし、グッタリしている彼女から上半身を離すと 彼女も足を解いた。
息に合わせ上下する胸を撫で、そこら中にキスをして愛情を注ぐ。
鼠径部から太腿、足先に至るまでじっくりと撫でまわしキスの雨を降らせ 少しずつ彼女を落ち着かせていった。
再び彼女に覆いかぶさると頭を抱き寄せ額にキスをした。
そのまま後頭部に手を回し、口枷のベルトを外す。
彼女は死んだかのように全身から力が抜け、放心状態のままだ。
背中に腕を回し、しっかりと抱き締めた。
よく頑張ってくれた愛しい人。
しばらく体を合わせていると
「先生の顔が見たいです」と言うので最後に目隠しも取ってあげた。
長く暗闇の中にいたせいで眩しそうに眼を開ける彼女。
それでも私の目をマジマジと覗き込む彼女が不意に唇に吸い付いてきた。
かぶりつくような勢いだったが それはとても感情的でロマンティックなキスだった。
お互いの存在と愛情を確かめ合うように体と口を合わせ、相手の全てを感じている。
やがて彼女はコトンと頭を施術台に落とすと あれだけ荒かった呼吸も落ち着いていた。
 
「凄かった・・・体が溶けるかと思いました」
と、言ってくれたのは嬉しかったが、私はどうしても先程の事が気になっていた。
『スミマセン、中に出してしまいました』
と謝ると、彼女は私に軽くキスをして悪戯っぽく笑った。
「ふふふ、アフターピルを持ってきてるから大丈夫なんですよ」と予想外のことを口にした。
『えっ!?じゃあ最初からそのつもりだったんですか?』
「先生忘れたんですか? 先週、先生が謝ったペナルティが1つある事を。あれのお仕置きです」と、また悪戯っ子の顔になっていた。
『なんと・・・ずっと私がコントロールしていたと思ったら、水面下のプランがあったんですね』

と言うと2人で顔を見合わせて笑い またキスをした。
 
胸のつかえが落ちたところで また彼女を抱きしめた。
自然と彼女も抱き着いてくる。
何度でもいつまででもこうしていたい。
このまま腕の中に抱えていたら いずれ1つの個体に融合出来ないもんかと思ってしまう。
 
しばらく無言のまま抱き合っていた。
汗は引いていくが大量にぶちまけたローションで お互いの体はベタベタとしている。
あんなにヌルヌルしていたモノも乾いてくると逆に摩擦係数が強くなり、むしろノリ状になって2人が離れないよう協力してくれているかのようだ。
 
『このベタベタは不快でしょう、また洗ってあげますね』と言うと
「はい♪」と少女のような優しい笑みを見せた。
台を降りる前に靴を脱がせ、衣装も全て脱がせた。
そして生まれたままの姿で手を繋いで歩き出す。
ほんの数メートル先までで、かつ室内だというのに何だか露出散歩をしている気分になる。
彼女も同じような感覚になったのかもしれない、体をくっつけて やや下を向いているのが これでもかと言う程に可愛い。
 
シャワールームに入ってお湯を出すがお湯になるまで数秒ある。
まだ冷たいシャワーを彼女の足元に掛けてみた。
「キャッ・・ 先生の意地悪が出たー」
『可愛子には悪戯したくなるんです』
「可愛い子って私以外にもしてるんですか~?」
『あなただけですよ』と真顔で返事したが
「本当かな~」と、横を向いて口を尖らせている。
思わずそのほっぺを突っつく。
彼女は私の指を噛むフリをしたが、それを避けずに逆に口の中に指を入れた。
あっ・・という表情になり、私の指を舐め始める彼女が一瞬で妖艶さを放つ。
そしてその魅力に私の体も敏感に反応を示す。
指を舐めながら私の硬くなった分身を両手で愛おしそうに包んだ。
お湯が出ているシャワーを一瞬だけ2人の体に掛けた。
ノリのようになっていたローションは、それだけで再び十分な潤滑液に戻る。
私は指を抜くと唾液まみれになったその指を舐めた。
目が合った次の瞬間、私は彼女の後頭部と背中に手を回し力強く抱き締めていた。
貪るようにお互いが口を求め、両手は体を愛おしむかのように撫で合い 私の腕は更なる行き場を求め尻を掴み、果ては唇を甘噛みしていた。
顔が離れた頃には2人とも鼻息が荒く、ついさっき終えたのがウソのように興奮していた。
小柄な彼女は私の胸に顔を埋め胸板に噛み付いた。
歯形が残るくらい強く噛まれたが、それを彼女にされると その痛みすら快感になる。
彼女は私の脇腹にも歯形を残し、さらに私のモノを口に含んだ。
今までにない激しさだ。
んーんーと唸るように首を振り回して喰らい付いている。
やがて唾液をたっぷりと纏わせると口から解放し、立ち上がって後ろを向いた。
だが、私は肩を掴み再び正面を向かせた。
彼女の左手首を掴むと壁に押し付け、私は片膝をついた。
片手は乳房を包み、口は反対側の乳房を求め激しく舐め回した。
エスカレートする感情は早々に口を更に下へと向かわせる。
彼女の片足を肩に担ぐと、まだ私の精液が残る性器にしゃぶりつき 無我夢中で舌を使う。
もっともっとと言わんばかりに彼女が片手で私の頭を抑えていたが、一気に盛り上がったせいか
「きて・・・」と直球で催促された。
彼女の片足を脇に抱え中腰の姿勢で自分の分身を当てがった。
ズルリと一気に刺さる快感に早くも彼女は歓喜の声を上げる。
まるで童貞だったかのように最初から一心不乱に腰を振る私に、激しい声で応える彼女。
その口を口で塞ぎ、2人の荒々しい鼻息がいやらしさを倍増させる。
しかし快感に抗えない彼女は激しいキスをしながら、私の口の中で喘ぎ声をあげる。
それでも構わず激しいピストンと並行して彼女の舌を舐め、鼻を舐め耳まで舐め上げた。
私の首に回した腕は一生離すまいと言わんばかりに力が入っている。
お湯で粘度の戻ったローションの助けもあって、私が腰を振り続ける間 彼女は自我が暴走しているかのように上半身をウネウネと擦りつけてくる。

爪の先ほどの面積でも多く肌を合わせ、密着していたい衝動が体を突き動かし
体の全ての組織が快感を得ていると言える程の波が2人を襲う。
やがて彼女は「あーーっ!!」と叫びながら私の後頭部を鷲掴みにした。
グゥゥッと締まる膣。
その圧力に後押しされ、直後に私も彼女の中で果てた。
抱き合った体勢のままハァハァと息をする2人。
彼女は辛かろうと体を下げ、2人して座り込んだ。
 
「先生激しい・・・」ポツリと言った。
『あなたの魅力がそうさせるんです』
少し放心気味の彼女に
『そのまま座ってて下さい、体が冷えるといけないので洗います』と告げてシャワーを出した。
『ローションは温度が高い方が落ちやすいので 少しだけ温度を上げますね』と断ってから足先から掛けてあげた。
背中まで丁寧に流した頃に ようやく彼女がゆっくりと立ち上がった。
丸いお尻を流す時は必要以上に撫で回し丁寧に洗った。
正面を向かせ お腹から胸を洗い流す時は 心地良さそうに目を瞑っている姿が可愛くてたまらない。
首まで洗ったところで彼女が優しくシャワーに手を伸ばした。
「髪は一人で流す方が早いと思うので、先に先生を洗ってあげます」と言うと私の体を流し始めた。
一通り流してもらったところで額にキスをして
『では先に出て またお茶を煎れてきますね』と告げてシャワールームを出た。
今日は予め準備しておいたので、最低限の作業で手早く済ませ またシャワールームの前に戻った。
髪を洗い終え、出て来た彼女は バスタオルを手に待ち構えてる私を見てクスリと笑い、素直にバスマットの上で直立になった。
軽く頭を拭いてから 上から下へと丁寧に拭いていく。
『はい、後ろを向いて』『はい、両手を上げて』と指示する私に子供のように従う彼女。
毎日これをしてあげたいと思う。
 
足先まで終えると体にタオルを巻いてあげた。
洗面台のところに数歩移動して別のタオルで頭をもう一度拭いてあげる。
ドライヤーを使う彼女の後ろから私が髪にに指を入れ、パサパサと振っての共同作業で乾かす。
我ながら微笑ましい光景に心の底から幸せを感じる。
ショートヘアーの彼女は乾かすのに そう時間は掛からなかった。
「2人だと早ーい♪」と彼女も笑顔だ。
 
すっかり落ち着いた2人は また手を繋ぎながら部屋へと戻った。
彼女を座らせ、丁度入ったであろうお茶を取りに行った。
お盆を持って戻ると チョコンと座ってる彼女の姿がこれまた可愛らしい。
 
こうして揃ってお茶を飲むのも3度目だが ずっと前からこうしていたような気分になる。
不意に彼女が顔を上げ
「先生、お二階が住まいなんですよね?」
『そうですよ』
「あの・・・私、明日はフリーなんです。今日泊まっていったらダメです・・か?」
驚きの発言だった。

 

『私もお話があります』と言うと、改まった私に良からぬ想像をしたのか不安げな表情を浮かべた。
『まだ3度しか会ってないので、正直 言おうか迷っていたんですが・・・』
「・・・何でしょう?・・」
『正直な言葉にすると・・・ あなたを他の男に触らせたくないです!他の男の目にも晒したくない程に・・・。私だけの女性になって欲しい!』
思い切って気持ちを話した。

彼女はまだ離婚の傷が癒えてないはずだ。

それなのに新しく出会った男にこんな事を言われても、受け入れられないんじゃないかと思っていたが、どうしても自分の気持ちを抑えられなかったのだ。

何より私には彼女を幸せにしたいという強い想いがある。

それを分かって欲しかった。


彼女はグッと目を見開き、数秒固まったかと思った次の瞬間 飛び掛かるように抱き着いてきた。
「嬉しい・・・私が言って欲しかった言葉です。でも受け入れてもらえるか不安で・・・」
私も強く抱きしめながら もう一度ハッキリと聞いた。
『あなたが欲しい! 私の恋人になってくれますか?』
「はい、こちらこそ宜しくお願いします」
 
 
 
    ~FIN~

続・深淵

 ~Day2~
 
私は朝からソワソワしていた。
彼女とは今日、2度目の来院で逢える予定だ。
「来週の同じ曜日、同じ時間でお願いします」
と言った彼女の言葉を信じていないわけではない。
私は彼女と会えない日々を悶々としながら過ごしていた。
帰宅してから後悔していないだろうか?
一時でも幸せを感じて欲しかったが 彼女の満足いくモノだったのだろうか?
考えても仕方ないとは分かっていても、彼女の事が頭から離れないのだ。
 
そして午後、予約のきっかり5分前に彼女はやって来た。
扉を開ける音に胸が高鳴ったが、平静を装い
『いらっしゃいませ』と笑顔で迎えた。
彼女は少し照れ臭そうに
「こんにちわ」と挨拶をしてくれた。
前回はリクルートスーツのような固めの服装だったが、今日は水色と白の爽やかなワンピース姿が眩しい。
 
いきなりマッサージには入らず、まずは座って話をする。
就職活動に前向きな気持ちで臨めている事や 良く睡眠が取れるようになったと報告してくれた。
一週間、ここに来るのが待ち遠しかったとも。
現時点において、これ以上ないほどの賛辞を貰えた。
確かに憑き物が落ちたように活気のある表情をしているし、今日の服装にも合点がいった。
それだけでも彼女を幸せにしたいとの私の気持ちが実った気がする。
 
『それではマッサージをしていきましょうか。また衝立の向こうにいるので・・』と言いかけると彼女が遮るように
「あの・・今日はマッサージのための下着を着けて来ていますので大丈夫です」
と言うと、私の目の前でそろそろと脱ぎ始めたではないか。
最初からそのつもりだったのだろうが、それでも躊躇するような表情も見て取れる。
背中に手を回しファスナーをゆっくりと降ろし、肩からハラリと抜け落ちるワンピース。
両手で優しく掴み、シナを作るように腰から足元へと下げていくとストッキング越しのショーツが露わになった。
片足を曲げ、ワンピースを抜き取った瞬間の彼女は息を飲むほどに美しい。
そしてストッキングに親指を掛け、スルスルと足先へとズラしていった。
これから目にするはずだった下着姿とは言え、彼女が目の前で脱いでいく様はスローモーションのように私の意識を惹き付けた。
挑発している?
いや、違う。
これは私に対してではなく、彼女が自身に向けたパフォーマンスだ。
一歩を踏み出す勇気をもう一人の自分で与えようとしているような そんな印象を受けた。
 
下着はスポーツタイプの上下セット。
前回、ここで選んだ物に形はとても似ているが大きく異なる点がある。
これでもかと言わんばかりの真っ白な生地なのだ。
見るからにスぺスぺしていそうなその下着により 自分の鼓動が聞こえるかと言う程に私を興奮させた。
着替え用の籠に脱いだ服を丁寧に仕舞う彼女が 此方にお尻を突き出す。
パンッと張った彼女の丸いお尻を ここぞとばかりに凝視していると、不意に振り返った彼女が視線に気付いた。
 
「そんなに見ないで下さい・・恥ずかしいです」
『どうか見て下さいとばかりに突き出されたので、遠慮なく瞼に焼き付けていたんですがダメでしたか?』
彼女の目を見ながら真剣に投げかけた。
「ダメではないですけど・・・」
彼女は思わず目を逸らし 両手で胸と腰を隠す仕草をした。
少し意地の悪い投げ掛けにも この反応である。
一体どこまで可愛らしいのか この人は。
仮に演技だとしたらやり手の役者だが、私の目から見ても自然としか思えない。
これが天性の小悪魔というモノなのだろうか。
 
彼女に一歩近付き、両肩を挟むように手を添える。
『とても美しいですよ』
彼女は俯いたまま
「いえ、私なんて全然キレイじゃないです」と答えた。
謙遜と言うよりは、本気でそう思っているようだ。
 
『客観的に見ても事実です。お世辞ではありません、本当に美しいと心から思って出た言葉です』
驚いたようにこちらを向き
「・・ありがとう御座います、あまりそういう事を言われたことが無かったもので・・・」
前回から何度も訪れている "抱きしめたくなる衝動" を堪えるのもまた大変である。
 
数秒の思わせぶりな沈黙の後、施術台に寝てもらった。
 
本心はもっと話していたい。
なんせ彼女とは2回目のコンタクトで まだ性的趣向をしっかりと把握出来ていないのだ。
もし彼女の望まない事や多少 嫌な事をしてしまっても、今の彼女では拒否の意思を示すようには思えないが 私の望みは彼女の幸せ。
ここからは前回にも増して観察眼が試されるかもしれない。
それでも既に彼女はヒントをくれている。
私の前で自ら下着姿になった事。
そして自然を装って私に向けたお尻。
露出とはちょっと違う、視姦を軸とした被虐の路線を追っていくのが正解だろう。
 
私は彼女が来院する前に立てていた予定を少しだけ変更する事にした。
 
まだ指一本触れない。
俯せで寝ているため自然と目は閉じているが 周りを確認しようと思えば出来る状態だ。
彼女の周りをゆっくりと歩き 観察しながら時折言葉を掛けてみる。
 
『前回は若干ですが乾燥気味だったお肌も今日はスベスベな様子ですね』
『肌艶がいい感じになっています』
『真っ白な下着がとても良くお似合いですよ』
 
彼女は反応しまいと堪えているが、言葉を掛ける度 少しずつ体に緊張が増しているのが伝わって来る。
真っ直ぐに伸ばした脚が僅かながらにモジモジしているのだ。
先週の事を踏まえて足先への刺激を想像しているに違いない。
その期待に応えるか、はたまた不意を突いて別の場所から始めるか・・・
 
考えた結果、彼女に言わせてみる事にした。
 
『どこから"始めて欲しい"ですか?』
「え・・と・・ 先生にお任せします」
『いえ、あなたのリクエストに応えたいんです。場所を指定して下さい』
「そんな・・・先生は時々いじわるですっ」
『伝わりにくいかもしれませんが、私なりのあなたへの愛情なんですよ』
愛情というワードに反応したのか、横を向いていた顔を完全に伏せてしまった。
足音を立てずに近付くと耳元で再度質問した。
 
『どこがいいですか?』
「ひっ ぁ、あの・・足の指からお願いします・・」
突っ伏したまま耳元を少し赤くしながら答える彼女は魅力の塊だ。
 
背中に手を添えるとツツツと指を這わせながら足元まで移動した。
途端に今までに無いほど全身に力が入っている。
 
『襲うわけじゃないんです、どうかリラックスして下さい』
この状況でリラックスと言うのも本来おかしな言い方だが、早くも気持ちが高ぶりつつある彼女は気付くまい。
「ぁ、はい。スミマセン」
 
ふと思う事があって一言添えた。
『1つだけお願いがあります。今日は スミマセンやゴメンナサイという謝罪は禁止という事で。
私はあなたを癒したいんです。あなたには ただ気持ち良くなる事だけを考えていて欲しい。あたなの嫌がる事をするつもりはありません』
「はい、スミ・・ぁっ あの待ってます」
つい、おかしなことを言ってしまったと思ったのだろう、施術台の端を握ってしまっている。
もし私がこの場にいなければ きっと足をバタバタさせていたに違いない。
人に点数を付けるようなナンセンスな事はしない性分だが、彼女に関しては100点満点だと言わざるを得ない。
 
今回は少し違うオイルを使う。
無臭のオイルとローションを独自に配合した物なので容器もプラスチック製だ。
強く握って ブリュッと音を立てて手にオイルを取る。
両手で足の裏から爪先まで満遍なくコーティングするが もちろん指は丹念にこねくり回す。
リクエスト通り足の指からスタートするが、最初からしつこいレベルの愛撫だ。
特に指の間にヌルヌルと這わすと、リラックスしている体のお尻だけがキュッと盛り上がる瞬間がある。
完全に突っ伏していた顔も横向きになり 全身で次なる刺激を待っている様子が分かる。
その受け入れ態勢は 同時に私への信頼と期待も意味する。
まだ2回目だというのに これは嬉しい限りだ。
 
彼女の期待に応え、その美しさを引き出すためにも前回以上に神経を研ぎ澄まとうと意気込む。
そのための無臭オイルだ。
親指と人差し指の間、人差し指と中指の間・・・
小指の間まで丁寧に丁寧に、またゆっくりとなぞり愛撫を続ける。
同じ動きのまま、彼女から発せられる匂いを嗅いでみる。
先週と同じ植物系のソープが香るが 無臭オイルを使っているため彼女の匂いと相まって よりリアルに感じられる。
その体勢のまま こちらを見れる角度で設置してある鏡を確認する。
彼女と目が合った!
が、トロンとした目は現実を見ていないかのようだ。
優しく鏡越しに微笑みかけると急に我に返ったのか 慌てたようにギュッと目を閉じてしまった。
彼女の行動から仕草まで、その全てが私の心を惹き付けて止まない。
幼稚な男なら 〈全部計算だろ〉などと中傷するだろうが彼女は違う。
心の欲求に素直なのだ。
あまりにピュアが故に美しく眩しい。
 
ここからは2択だ。
このまま彼女への愛撫を続け ひたすら快感へと誘うか、それとも時々この現状を認識させ彼女の羞恥心を煽るか・・・
難しい選択だが今日は前者を選んだ。
彼女のピュアさに絆された面もあるが、後者は彼女の性癖とズレた場合に集中が途切れてしまうリスクがある。
それはもっともっと彼女を理解して上での方が良いと思った。
 
前回は施術だったため、片脚ずつ行ったが 今回は可能な限りシンメトリな刺激を与えていく。
前傾姿勢になり両の脹脛をヌルヌルと撫で上げる。
圧力は極めて低い。
何度か撫で上げた後、今度は10本の指先だけで なぞり上げていく。
特に内側だ。
足を揃えているため、受け入れるには自ら少し開かねばならない。
だが、まだ開く様子は無い。
ならばと太腿へ手を伸ばした。
太腿の裏から間に掛けて入念に指を這わせていく。
閉じたままではあまり深くへは侵入できない。
何度か繰り返していると カタツムリより遅いペースでジワジワと開いて行ってることに気が付いた。
無意識に自然と開いているのか、羞恥心からこちらに悟られまいと ゆっくりと開いているのか・・・
私の意地悪な面が鎌首をもたげるように あえて彼女に言葉を投げ掛けた。
『いい子ですね、自ら足を開いてくれるなんて』
彼女は無言で額をグッと施術台に押し付けた。
現状を認識させない選択をしたはずなのに、つい自分の性癖に寄ってしまった。
しかしそれも まんざらではないようだ。
そして いい子にはご褒美が必要。
その自ら開いてくれた腿の間を私の指先が上下する。
指が往復する動きと同時に、腿の間に息を吹きかけた。
股間まで軽めに届く程度の勢いで。
顔を近付け匂いを確認したと思っただろう。
離さなくなった施術台を握る手から ギュッという音が聞こえてくる。
呼吸が意識に追いつかないのか 彼女が深めに息を吸って吐いた。

 
それを合図のように私の手は臀部へと更に上がっていくため、足元から施術台へと乗り 彼女の弾力のある脚は私の股間の下で再び閉じられた。
最初に褒めた肌の艶はオイルを抜きにしても本当にスベスベとしている。
大きめのお尻を私は両側から円を描くように撫で回した。
もう悟られないようにする必要は無い、遠慮なく親指はショーツの下へと潜り込む。
何という丸いお尻だろうか。
彼女の全てが可愛らしいが、特にこのお尻は一生忘れまいとギラギラとした視線で眺めた。
白いお尻に食い込むように真っ白なショーツが本当に絵になっている。
このまま腰にガッシリと抱き着き、頬擦りしたくなるが自分を抑え ひたすら彼女のお尻をヌルヌルと愛撫する。
 
十分にお尻を堪能した私は施術台を降り、仰向けになってもらう。
前回は彼女に聞いたが、今回は無言でタオルを畳んで彼女の目に乗せる。
暑めの空調も効いてか彼女は顔に薄っすらと汗を浮かべている。
その汗を舐め取りたい衝動を抑え彼女の腹部へとオイルを垂らした。
今回はショーツに付着しないように気を付けている。
狙いは言うまでも無い。
一通り腹部へと塗り広げたオイルはローションも混ぜているため手を離す際にやらしく糸を引く。
脇腹を指先でそーっとなぞってみた。
彼女が生唾を飲んだのを見逃さない。
気を良くして全体を撫でながら脇腹だけは指先でのソフトタッチにする。
腹部の中心には これまた可愛いお臍がこちらを見上げている。
流れの中で人差し指を入れてサッと離してみた。
チュパンッと小さな音がすると、彼女が口を開いて何かを言い掛けたが そのまま口を閉じてしまった。
果たして彼女に可愛くない部分なんてあるのだろうか?
 
おもむろに施術台に乗り、馬乗りの体勢になる。
『お食事は何時に取られましたか?』と聞くと、すぐに察したのか
「大丈夫です」とだけ答えてくれた。
私は片手は台で自分の体重を支え、もう片方の手を彼女の腹部に当てがった。
ゆっくりと押し込み私の手が彼女の中へと侵入していく。
感触具合からして どうやら今日は食事は一切取っていないようだ。
食い込んだまま 指だけを少しだけウネウネと動かしてみた。
思わず はわわっと両手で空中の何かを掴むようにもがいた。
途端に腹筋に力が入り、あえなく私の手は押し戻されてしまった。
 
『不快でしたか?』
「ぃぇ、すごく気持ち良かったんですが なんだか反射的に力んでしまいまして・・・」
『いずれ慣れるでしょう。胸の方に移りますね』
 
私はオイルを追加すると 彼女に馬乗りになったまま乳房の近くへと両手を這わせた。
乳房の周りを撫でながら親指で生地にオイルを付着させてみた。
やはりだ!
濡れると透明になるかの如く透ける素材だ。
当然だが彼女はこれを分かって選んできたはず。
この日のために購入したのか以前から持っていたのかは 後で聞いてみる事にしよう。
 
それではと、遠慮なくオイルを胸全体に大胆に垂らしていく。
周りから始め、段々と中心へと・・・
乳首までスケスケになった頃には彼女の口は半開きになっていた。
視界が無いまま想像の中で "露わになった自分の体を眺める私" を想像している事だろう。
だがまだ何もしない。
オイルボトルを置いてから私は存分に味わうため、彼女を見下ろしている。
照明をヌラヌラと反射させている体、下着に覆われているのに今やその姿を余すこと無く晒している乳房。
彼女の想像の中の私は彼女を凝視しているはずだ。
それは合っている、私の目は乾かんとする程に見開いているのだ。
内心 羞恥に見悶えているであろう彼女、その彼女を涎を垂らしそうに眺める私。
この空間の異質さは例えようも無い。
時間にして10秒ほどだったが 早く触って欲しいのか彼女は親指を握り込んでいる。
 
無言で彼女の乳房を支えるように両手をピッタリと添えた。
それだけで「うんっ・・・」と声が漏れる。
その淫靡な響きのきっかけは私を加速させた。
もっと時間をかけるつもりが指が先走るのだ。
両手で乳房全体を揉み上げながら親指は乳首付近まで往復する。
それに合わせるかのように彼女の呼吸も加速する。
吐息は僅かな声を伴い、私の聴覚と視覚が彼女の魅力に浸食されてゆく。
愛おしい、ひたすら愛おしい。
私の手の中にあるのは彼女の乳房だけだが、まるで彼女の全てを手に入れたかのような錯覚を覚える。
全体を揉みながら下着の上から両方の乳首を同時に刺激した。
首をのけ反らせ「ああぁぁぁぁん・・・」と一週間ぶりに聴くハッキリとした喘ぎ声。
たまらず全体と乳首への刺激をしつこいくらいに続ける。
部屋と私の耳にこだまする いやらしい声は途切れること無く響き渡り 時間を追うごとにその声は大きくなっていく。
「先生ぇ・・・」と呼び掛けられたが私は『美しい・・』という言葉しか出て来なかった。
「もっとしてください・・」
と求める彼女のエロティックなマントラは私の脳を痺れさせる。
あの清楚とも言える内向的な女性が自ら愛撫を求めているのだ。
その落差に私は感動し 極限まで彼女を悦ばせたいという衝動が更に私を突き動かす。
 
私は一旦施術台を降り、彼女の目に乗せたタオルを そのまま後頭部で縛った。
背中の下に手を差し込むと 上半身を起こすようにと促した。
その間に私は上着を脱ぎ捨てた。
シャツは着ていない、上半身は裸の状態だ。
施術台を跨ぐように彼女の後ろに座ると彼女の背中と密着させた。
驚く様子も無く、素直に私に背中を預け もたれかかってくれる。
その体勢でオイルを肩から乳房へと垂らした。
大量のオイルに覆われた彼女の乳房は ゼリーに閉じ込められたフルーツのように美しくその存在を見せつけている。
私は両腕をガッシリを前に回した。
後ろから彼女の頬に私の頬が重なる密着具合だ。
片腕はお腹を愛撫し、片腕は乳房の上を行き来する。
彼女の呼吸が近い、その熱を感じるほどに。
ネチャネチャという音は私を更なる高みへと昇らせ、両手で彼女の乳房を揉み上げた。
「ああぁっ」と首を反らせた彼女がこちらを向き、「はぁぁん」という声と共に私の耳を噛んだ。
ゼロ距離で彼女の喘ぎ声が私の耳奥に届く。
何という幸せか!
このまま1つの体へと融合してしまいたい。
思わずブラの中へ手を滑り込ませ乳房を我が物とした。
再び耳から脳へと響き渡る彼女の喘ぎ声。
たわわな彼女の乳房と硬くなった乳首をひたすら愛撫する。
「あはぁっ はぁっ」と止まる事の無くなった甘い響きは彼女の体臭と合わさって 2人の空間を包み込む。
乳房をしっかりと覆ったまま手を止め、全ての指だけで乳首も乳房も全体を愛撫する。
「ん~ん~」と唸るような声へと変化した。
時に脇腹も愛撫し、時に両手でこれでもかと乳房を愛撫する。
オイルとお互いの汗にまみれ、ヌルヌルになった体が擦れ合い、2人とも軟体動物になったのかと思う程だ。
彼女の呼吸と喘ぎ声が次第に大きくなっておく。
首がのけ反った瞬間、両方の乳首を痛くない程度に摘まみ上げた。
口を大きく開け
「あー!ダ・・ッ・・」と言葉にならない言葉を発する。
そのまま掌は乳房を揉み、指先でコリコリと摘み続けながら 彼女の首筋へと舌を這わせる。
チュルチュルと音を立て、彼女の汗を吸い取りながら今度は私が彼女の耳を噛むと
「・・クッ・・・」と言うや否や彼女は大きく首をのけ反らせ全身に力が入った。
数秒後、乳首を解放すると同時に脱力する体。
どうやら ほんの軽いオーガズムを感じたようだ。
しばらく彼女をしっかりと抱きしめる。
体は脱力してもハァ・・ハァ・・と息をする彼女の乳房と周辺を優しく撫でてから そっと寝かせて施術台を降りた。

まだだ。
意識が冷めてしまわない内に私は次の行動に出る。
彼女の足元へ移動すると、再び足先を触った。
足先を愛撫してもらえると思って再びリラックスしかけていた彼女だが 私は指を口に含んだ。
その瞬間、何をされているか理解した彼女は顔を上げ
「そんな!汚いですっ!」と私を制止しようとしたが
『あなたに汚い所なんてありません』と間髪入れず私の方が彼女を制止した。
片方の指を舐めてる間、逆側の足は手で指を愛撫する。
親指全体を口に含み、表も裏も舌で愛撫する。いや、私が味わうと言った方が正解だ。
目だけでチラリと彼女を確認すると両手で顔を隠している。
だが、その手の間から声は漏れ お腹は波打っている。
そして指の間。
舌全体で指を舐めながら舌先は間を下から上へ、上から下へとなぞる。
相変わらずお腹は波打っているが、体全体はダラリと力が抜けている。
たまらない、彼女は溶けているのだ。
私は喜びに浸りながら同時に激しく興奮していた。
舌は長い方ではないが、男の口の大きさを利用し 親指以外の4本を一気に口に含んだ。
歯を当てないように舌は4本の指を裏から嘗め回す。
そのまま指の狭い隙間に舌を捻じ込む。
先程までとは違い、激しくないフワフワと浮いてるかのように滑らかに悶える彼女。
5分以上は舐めていただろう。
オイルに覆われ酸味を含んだ匂いを発していた彼女の足は今や私の唾液にまみれている。
 
無言で移動し、彼女の両膝を曲げるとそのままガバッと倒した。
これ以上ない程のガニ股である。
反射的に彼女の口から 「あっ・・」と声が漏れた。
ピッチリとしたショーツを履いているというのに、内腿にまで愛液が付着しているではないか。
染みているだろうと思われた秘部はそれどころの騒ぎではなかった。
オイルは付いていないよな・・・?と無言で周囲を確認した程だ。
私は思わず 『こんなに・・』と声に出してしまっていた。
言わんとする事を十二分に理解している彼女は
「だって先生が・・・」と弁明するのが精一杯だ。
見下ろす私と 手で口元を隠す彼女。
足を閉じようとする動きを察知し、膝を押さえ無言で舐め回すようにガニ股の彼女を眺めた。
10秒ほど経過した頃に彼女がたまらず小さく問いかけてきた。
「あの・・先生・・」
私は彼女の耳元で
『嬉しいです、こんなにビチャビチャになってもらえて』と、明け透けに囁くと
「いやっ 私じゃないです!」と、やや意味不明な言葉が返って来た。
いい具合に頭の中が醸されてきているようだ。
わざと彼女に聞こえるよう音を立てて秘部の匂いを吸い込んだ。
「そんなっ やめてください」と手でも嫌々をするように示したが本心では違うだろう。
足の匂いを嗅ぐ時は受け入れたのを踏まえて分かる。
まだ彼女は自分の中で二の足を踏む時がある。

『最初に言ったように あたなたの嫌がる事はしません。"本当に" 嫌ですか?』
彼女自身の言葉にさせるためハッキリと問うた。
「その・・あまりに恥ずかしくて・・ 先生の好きにしてください」
まだ暈した言葉だったが、今はこれで良しとしよう。
あとは私が行動で背中を押す。
 
彼女の両足を持ち上げ施術台に乗った。
正常位の形まで開脚させると自分で両足を抱えるよう指示した。
彼女はもう気付いているのだろう、次に私が何をするのかを。
目の前にはドロドロに愛液を吸収し、見事に秘部を透けさせているショーツがある。
もし少しズラして隙間を作ったら流れ出て来るのでは?と思うくらいに分泌している。
私は彼女の太腿を支えて迷わず顔を突っ込んだ。
鼻の向こうからグシュッという音と感触が伝わって来る。
「んんっ!」と声を押し殺す彼女。
私は顔を突っ込んだまま 一気に肺の奥まで吸い込んだ。
もう拒否の様子も見せない。
また吸い込む、更に吸い込む。
しっかりシャワーを浴びて来たのだろうが、有り余るほどの愛液と十分に満たされた熱気による汗とで 彼女の秘部は私の脳を興奮させる匂いを十分蓄えていた。
香しい!これが彼女なのだ。
再び顔を突っ込み、無我夢中で彼女の匂いを取り込んだ。
口から目一杯吸い込むとショーツの向こうからブシュッという音と共に愛液が私の口に飛び込んで来る。
繰り返すとジュブジュブと立つ音が 私の動きに比例して増している。
 
「先生・・・私もう・・」
それだけで十分にわかった。
私はショーツに両手を引っ掛け、裏返すようにスルスルと抜いた。
性器から離れる際、見せつけるように糸を引く透明な分泌液。
右足だけ抜いて、ショーツは左足に引っ掛けたままだ。
 
改めてグッと両足を持ち上げると そこにはいやらしい泉が待っていた。
性器という物は構造上 美しい造形物とは言い難い、しかし快感を求め涎を垂らすその姿は淫獣としての 淫らな美しさを放っている。
待っているのだ次の快感を。
「お願いです・・はやく・・・」
求める彼女の淫獣にもう一度 顔を突っ込んだ。
同時に大きく喘ぎ、抱えた足を離しそうになる彼女。
私は顔の半分を愛液でベトベトになりながら匂いを嗅ぎ 舐め上げた。
舌をなるべく広げ、大きな範囲を下から上へ ベロベロと数えきれないほど舐め上げた。
もう我慢しようともしない淫靡な喘ぎ声が院内に響き渡る。
絶え間なく分泌される愛液を逃すまいと 私の舌が絡め取る。
一滴も残さず私が吸収するのだ。
次第に喘ぐ声が大きくなってきたタイミングで それまで鼻で刺激をしていたクリトリスを中心に舐め回す。
一気に快感を登り詰め
「ああぁっ イクッ!」と体を震わせたが、私の愛撫は一切止まらない。
構わずにひたすら舐め続ける舐め続ける。
そのまま指をジワジワと入れてみた。
だが大量に分泌された愛液で 私の指は飲み込まれるようにスルスルと入った。
既に喘ぎ声は変化も分からない程に乱れに乱れている。
Gスポットの位置は個人差があるが、探し当てるのは比較的容易だ。
最も反応のいい所を指の腹で刺激しながら 口は舐める事をやめない。
それまでより一際大きな声で
「ダメェ またイッちゃうぅぅ」と叫ぶと全身が硬直したように止まった。
その間に愛液をジュルジュルと音を立てて吸い取る。

やや朦朧としている彼女が
「今日は安全日なんです・・」と告げた。
そのための一週間だったのか!
一言で全てを悟った私は彼女の性器を舐めながら器用に片手でズボンとパンツを一気に脱ぎ捨てた。
そしてまだ彼女の膝に掛けたままだったショーツを手に取ると迷わず頭から被った。
ちょうど鼻まで隠れる位置まで。
きっと彼女ならば分かってくれると期待し、視界を遮断していたタオルを解いた。
彼女は想像すらしていなかったはずだが、私の姿に驚いた様子も見せず
「先生、やらしい・・・」と恍惚の表情で呟いた。
いつの間にか彼女はブラをズリ上げていた。
私の屹立は限界までパンパンに膨れ上がり、彼女の性器に触れていた。
彼女は いきり立った私の屹立に触れると
「こんなに・・・嬉しい」と、向かうべき場所に欲しがるように当てがった。
ヌルリと先端が入ると
「んあっ!」と両手を私に向かって伸ばす。
私の怒張はゆっくりとゆっくりと入っていく。
それに合わせるように「はぁぁぁぁぁぁ・・」と歓喜の声が伸びる。
一番奥へと到達すると彼女に覆いかぶさり 強く抱きしめた。
今のこの瞬間がいつまでも続いて欲しかった。
腕の中にいる淫靡で美しい人と私は繋がったのだ。
物理的というだけではない。
まさに精神が繋がっているという一体感。
私の樹状突起から放たれるシナプス小胞が彼女のレセプターにピッタリと収まっていくとさえ感じる程に。
やがて ゆっくりと抜きかけると入り口付近から もう一度彼女の奥底まで沈める。
「ん~ん!」と声にならない声が私の耳元で発せられる。
そして私は動物の如く腰を振り始めた。
その度にヌチュッヌチュッと聞こえてくる音のやらしさは2人の世界を更に深い穴へと押し進めた。
ピストンの動きに合わせてアンアンと悶え続ける彼女を更に狂わせようと腰をグラインドさせる。
背中に回された腕に力が入って
「んあっ!! そっ・・それぇ・・・」
と期待以上の反応に私も応え 汗だくになりつつグラインドを続ける。
「もーダメ、壊れちゃうぅ」
と言うところで抱き着いたまま彼女の耳に舌を入れ、逆側の耳には指を入れた。
私の耳には悲鳴のような喘ぎ声がつんざき、その直後 子宮がグッと降りて来るような圧迫感があった。

3度目のオーガズムを迎えたが私の腰は一瞬たりとも止まらない。
一旦は落ち着きかけた彼女の喘ぎ声もすぐに乱れ 両腕は私の背中にしっかりと回されている。
汗がじっとりと浮かぶ頬をゾロリと舐めると私は上体を起こした。
すんなりと背中から離れた腕は自分の乳房を掴んでいる。
純粋が故の貪欲さは見ていても嬉しくなる。
上体を起こすと陰茎が膣の天井側、Gスポット周辺を強く圧迫するため彼女の喘ぎ後に拍車がかかった。
それに合わせピストン運動を続けながら 親指で軽くクリトリスを刺激すると
「ア"ア"ア"ア"ァァァァーッ!!」
と、奇声を発し これ以上無理という程に首をのけ反らせた。
ギュウと彼女の中が締まり、今度は私が耐えられなくなりそうだ。
『私もイキますよ』と告げると
「きてぇ!」と呼応する彼女。
再び彼女に覆いかぶさり、頭を掴んで唇に吸い付いた。
ここにきて初めてのキスだが、反射的にお互いを貪るように舌を激しく絡ませた。
「ん"ん"ん"ー」と唸った彼女の舌が止まった・・・
それと同時に彼女の奥で私は大量の白濁液を放出した。
あまりの快感に腰がビクンとなるが、そのまま数回ピストンを続けて私は果てた。
死んだようにグッタリとする彼女を抱きしめ続け 頬に額に首筋にキスをしながら頭を撫でた。
 
やがて意識を取り戻したかのように
「死んじゃうかと思った」と一言漏らした彼女に
『ちゃんと蘇生させます』と、面白くも無い直球な返事をしてしまったが、それでも彼女は嬉しそうにニコッと笑ってくれた。
 
しばらく抱きしめていると半分ほどに力を失った陰茎がズルリと抜け落ちた。
彼女の足を揃えるように伸ばしてあげると、私は後戯に移った。
太腿をソフトに揉み 腹部にはキスの嵐、胸は優しく撫でながら首筋に口を這わせた。
「ふ~~」と心地良さげにしている彼女を確認し、腕枕をすると広くない施術台に並んで寝た。
鼻が付きそうな至近距離で見つめ合っていると 彼女の方からガバッと抱き着いてきた。
さっきまでとは上下逆の体勢で彼女を抱きしめ 耳元で
『とっても素敵でした』と囁いた。
返事が無い代わりに彼女の抱き着いている腕にグッと力が入る。
また泣かせてしまうか?と心配したが それは杞憂だった。
しばらく間を置いてから
「先生も素敵でした」と言ってくれた。
何か言いたかったけど上手く言葉が見付からなかったようだ。
彼女の頭を軽くポンポンとすると
『全身ドロドロです、シャワーで綺麗にしてあげますから一緒に行きましょう』と告げて ゆっくりと体を離した。
滑らないよう足首から先をタオルで丁寧に拭いてあげる。
彼女を立たせると自然と手を繋いで歩きかけた。
2~3歩で彼女が
「あっ・・先生のが流れ出ててきた」と言うので
『そのまま垂らしながら行きましょう』と提案した。
すると繋いでいた手を離されたので 失言だったと後悔したが 下を向いたまますぐに腕に絡みつくように組んできた。
表情は見えないが食べてしまいたくなるような羞恥心だ。
全裸で歩く2人のペタペタという音だけが妙に心地いい。
 
シャワールームに入ると どちらからともなく見つめ合った。
同時に抱きしめ合い 唇を重ねる2人。
先程のがむしゃらなキスとは違い お互いを愛おしいと思うキスだ。
彼女の柔らかな体、スベスベの肌、まだ冷めやらぬ熱気の匂い。
 
「先生のがお腹に当たってます」
彼女と体を合わせていると幸せと同時に興奮も沸き上がって来るのだ。
『スミマセン、制御出来なくて・・・』
「謝罪は先生も禁止です」
ふふっと意地悪そうな笑みを浮かべた彼女は私の胸に軽く噛みついて お腹に刺さるように突き出た肉棒を両手で優しく包んだ。
もしかしたら被虐だけでなく、Sな面も持っているのかもしれない。
すると彼女が跪いた。
『まだ洗ってな・・』と言い掛けると
「先生の体も汚い所なんてありません」と制された。

軽く亀頭を口に含んだ彼女は周囲に舌を絡ませ ドロドロとした唾液と共に口の奥まで咥え込んだ。
思わず "うっ" と声が漏れてしまう。
それにしても彼女の口はどうなっているのだ。
まるで唾液ではなくローションを分泌しているかの如く ヌルヌルとした快感が脳の奥まで広がる。
そして伝わって来る彼女の想い。
私の足の後ろまで手を回し 自ら喉奥まで咥え、時に嘔吐きながらも懸命に私に奉仕してくれる姿は愛おしいと言う他ない。
『ダメです、そのままされたら私は・・・』
静かに体を擦り合わせるように立ち上がった彼女は私にキスをすると 無言で後ろを向き、こちらにお尻を突き出した。
彼女に抱き着くと肩や背中にキスをして はち切れんばかりに硬くなった陰茎を後ろから当てがった。
グリュッという感触と共に、2度目の体内への侵入。
身長差のため、私の方は少々不格好な体勢になるが彼女の快感が最優先だ。
指が食い込むほど丸いお尻を鷲掴みにする。
打ち付ける腰が感じる弾力は言い表す言葉が見付からない程に官能的で 私も彼女を堪能する。
両腕を前に回すと乳房とクリトリスを同時に愛撫した。
狭いシャワールームに悲鳴のような喘ぎ声が反響する。
 
程なく2人は頂点に達し、彼女はその場にヘタリ込んだ。
寄り添い、しばらく抱きしめながら頭にキスをした。
トロンとした目で見上げる彼女。
そして今日何度目かのキス。
 
『癒すはずが疲れさせてしまいましたね』
「こんなに気持ちのいい疲労感は初めてです」
どちらからともなく笑った。
 
『立てますか?今度こそ綺麗に洗ってあげます』
滑らないように支えながら立たせてあげた。
適温のシャワーを出すと足元から徐々に上へと掛ける。
良い子にして待っている園児のように真っ直ぐ立っている彼女の可愛さたるや もう誰の目にも触れさせたくないと感じる程だ。
『首を洗うから上を向いて下さい』と言うと キュンと上を向き、自然と目が合う。
一方的に洗われている姿が妙に恥ずかしくなったのか ギュッと目を閉じたので洗いながらニップキスをした。
「先生って、時々いたずらっ子みたいですね」と言って、また2人で笑った。
 
全身を綺麗にし終わると
「今度は私が洗ってあげます」と彼女がシャワーを取った。
仄々とした時間だ、さっきまでの時間が嵐のように。
 
シャワールームを出てバスマットの上で彼女を拭いてあげる。
タオルでゴシゴシされてる小柄な彼女は まるで子猫をお風呂に入れた後かのようだ。
彼女も同時に私の体を拭きだしたので、まるで競うようにお互いを拭き合いクスクスと笑った。
 
『またお茶を煎れて来ますので、あちらで待ってて下さい』
彼女の体にタオルを巻いてあげた。
「はい、分かりました」と行儀のいい返事。
 
今日は疲労回復効果のあるローズヒップティーを煎れる。
お茶を持って戻ると、なんとバスタオル姿のままで座っているではないか。
まるで私の心理が読まれているかのように。
私も腰タオルのまま正面に座ってお茶を出した。
 
『すぐ飲めるくらいの温度です』と勧めると素直に口に含んだ。
「これ私の好きなお茶です♪」
『それは良かった』と穏やかな空気の中、2人でお茶を飲んだ。
 
落ち着いたのか自然と世間話のような流れになった。
どれほど話していただろうか、少し外は暗くなり始めている。
 
『体が冷えない内に服を着ましょうか』
「はい」
『1つ小さなお願いがあるんですが』
「・・・何でしょう?」
『私が服を着させてあげたいんです』
と言うと ぇ?と意外そうな表情を見せたが返事を待たずに私は籠を取りに行った。
 
替えの下着はバッグから出してもらった。
ピンクと白をベースにした彼女らしいガーリーな下着だ。
『私の肩につかまって下さい』と言うと片足を上げた彼女にショーツを履かせてあげた。
ブラはフロントホックだったので、回り込まずに正面のままで。
『ストッキングを履かせますので、台に腰かけて下さい』
それは必要以上に撫でまわすように履かせた。
「先生なんだかやらしい~」
『え?今頃わかったんですか?』と惚けると爪先で肩をツンとされた。
『どっちがいたずらっ子なんだか』と言うと また2人で笑った。
 
ワンピースのファスナーを上げると、来院した時のように凛とした彼女に戻っていた。
私も手早く元の白衣を着る。
『今回は持って帰って頂く物があります』
彼女は「???」と小首を傾げている。
私は小さな箱を渡した。
「何ですか?これは」と当然の疑問を投げかけられた。
『これは次回、来院する前に開けて下さい。別にその前の夜でもいいですが』と告げると四方八方からしげしげと眺めている。
「えーなんか気になります」
『ダメですよ、次回のお楽しみですから』と言っても
「無理です、気になって眠れなくなりそうです。せめてヒントだけでも!」
と、元から大きい目を更に見開いて聞かれると言わないわけにはいかなくなる。
 
『えーとですね・・・これには次回、着て頂く衣装が入ってます。それとメモが』
「衣装・・・ですか?」
『はい、服の下に着て来れる物ですから大丈夫ですよ』
「ん~、先生の着て来て欲しい物なんですね。わかりました♪」と笑顔を見せてくれた。
『信用して頂けて嬉しいです』
「とっくにしてますよ。今頃わかったんですか?」と、すねたような表情でポンッとお腹にグーパンチをされた。
また足元をすくわれた感じだ。
こんなに馬の合う人も初めてだと感じる。
 
私は大事なことを思い出した。濡れると透ける下着の件だ。
『そうだ、聞きたかったことが一つあるんです。今日の下着は以前から持っていたんですか?』
すぐに意図を察知したのか、彼女は顔を赤らめながら
「えーっ それ答えないとダメですか?」と、躊躇っている。
私は彼女の両肩に手を置き
『はい、私には大事な質問です』と大真面目な顔で聞いた。
「持っ・・・ていました」
今日一番の赤面だ。
「もー!先生って本当に時々イジワルです」という彼女を思わず抱き寄せキスをした。
舌も絡ませない純愛のようなキスの時間だった。
 
彼女は下を向いて
「帰りたくなくなっちゃうじゃないですか・・・」と私の胸の中で切ない言葉を口にした。
『すみません・・・』
「謝罪は禁止なのに謝りましたね。先生、ペナルティー1つですよ」と言うと一歩下がってクルリと背を向けた。
無理に作ったような笑顔を見せ彼女はドアを開けた。
『帰り道、気を付けて下さいね』と言うのが精一杯だった。
もう一度同じ笑顔を見せてペコリとお辞儀をする彼女を見送った。
 
自分でも驚くほど寂しい気持ちに襲われた。
また来週会えるというのに、まるで二度と会えないかのような寂しさだ。
最後にもっと気の利いた言葉を掛けられなかったのかと自分を責めたが 私は待つしかない。
きっと彼女も寂しさを堪えてるに違いないのだから。